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王道な学園での恋愛-1
食事を終え、部屋に戻った俺は少しだけ部屋の掃除をした。ここで生活したのは一週間ほどだろうか。全く馴染むことがなかった部屋を見回した。
ソファに座り優雅にお茶を飲む会長を見ればこっちに来いと手招きされたので近づけば腕を強くひかれた結果、会長の上に乗りあげてしまった。
そのまま腰を下ろせば、会長は満足げに笑みを浮かべた。
「お前は…残りたいとは思わないのか?」
質問の意味が分からず首を傾げた俺の頬に触れた手はとても温かかった。
「調べたら何人かあの学園から消えた者がいたことがわかった。そして、戻ってきた者もいる事がわかった。」
頷く俺を確認するように会長も頷くと話を続けた。
「戻ってきた者の数は圧倒的に少なく、戻ってこなかった者の数の方が多い。そして、戻ってこなかった者は何かしら問題を抱え…俺が思うにあの世界に未練がないように感じた。それが一つのカギだった。」
会長の話を聞いてなるほど。と思った。転校生はきっとあの世界に未練がないのだろう。だったら俺は…?
「戻ってきた者の共通点は…一緒に消えた者がいる。という事。つまり…。」
「巻き込まれた?」
会長は「その通り。」と頷き俺の頭を撫でた。俺は「何だよそれぇ…。」と力が抜け会長にべったりと寄り掛かった。転校生に巻き込まれ異世界に来てしまった俺…なんて間抜けで不幸なんだ…。
「さ、明日は早い。さっさと寝ろ。」
会長は俺を抱えたまま立ち上がるとそのままベッドへと運んだ。相変わらずの力業に「あぁ会長だ。」とさらに実感できそのまま抱き着きぐっすりと眠った。
眠ったと思ったら起こされた。それほどぐっすり眠っていたのもあるし、まだ朝も明ける前なせいもある。
会長はさっさと着替えまだ目の覚めない俺の世話をせっせとしている。顔を拭き制服を着せ寝癖を直し…それはもう甲斐甲斐しく、下手に自分でやろうなんて思わないくらい完璧に。
そして手を引かれ連れてこられたのは、ここへ来て一度も踏み入れていない地下の怪しげな一室だった。重く頑丈そうな黒い扉を開けば何か黒魔術とかしそうな真っ黒で入るもの躊躇うような部屋だった。
不安になり会長にべったりとくっつき見上げると「そのままくっついてろ。」といい頷いた。本当に帰れるのだろうか…会長はここまで迎えに来てくれたし、今まで嘘なんか吐いたこともない。だからきっと大丈夫だ。ちらりと不安が見えてきたけど、それを消すように会長にぎゅっとしがみついた。
「大丈夫だ。戻ったらやりたい事とか楽しみな事とか考えてろ。」
会長の言う通り、戻ったらなことだけを考えようと目を閉じた。まずは会長の作った朝飯を食べよう。そして生徒会室に行って副会長と会計がサボって寝てたら起こそう…あとは庶務の双子が飼っているらしい犬を見せて貰って見分け着くように頑張ろう。そして会長に好きだって言おう。突然会えなくなって後悔しないように…。
「行くぞ。」
声が聞こえたと同時に身体が小刻みに揺れ足の下から地面が消えた。そしてあの時、階段から落ちた時と同じような浮かんだように感じたと思ったらそのまま着地した。
そんな運動神経が良いわけではない俺だけど、会長にしがみついていたのが良かったのか会長が凄いだけなのか普通に着地出来た。
閉じていた目を開ければそこはあの時落ちた階段の下で、会長が安心したように息を吐いたのが分かった。
「…戻ってきた?」
きょろきょろと周りを見渡す俺に「あぁ。」と答えた会長は「お帰り。」とそっと抱きしめてくれた。
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