63 / 112

第63話

 竜次郎に手を引かれ階段を上がり、襖を開けるとそこには既に布団が敷いてあった。  ご丁寧に二つ並んだ枕元には、ウサギの耳とシッポを生やした美少女の描かれたローションが置いてあり、日守のお気遣いかと思ったが、竜次郎が青筋を立てて『誰だこんなセッティングした奴』と怒っているのでなんとなくだが違うようだ。  これまでお世話になったことがなかったので興味深くボトルを手に取ると、「お前が横になりたいんじゃねえかと思って布団を用意をさせたら勘違いされただけだこのタイミングでやる気ムンムンだったわけじゃねえからな」と何やら早口の言い訳をされたので、別に気にしていないという代わりに、「使ってみたい」とローションを振ってみせた。  白濁タイプとか無駄にエロいな、と裸になった胸や腹にかけられたので、お返しに竜次郎にも飛び散らせてみたりしていたら、二人ともぬるぬるになってしまった。 「事後の竜次郎……」 「おい事後とか言うな」 「じゃあぬるぬる相撲?」 「せめてローションプレイって言えよ」 「そっか……勉強になります」  「なんの勉強だ」「社会勉強かな?」などといつものやり取りをしながら、じゃれあう。  竜次郎と一緒にいると、すぐに笑顔になる。  何かを恐いと思う心や、寂しさはどこかへ行ってしまう。 「ローションプレイって、どうするの?」  聞くのかよ、と苦笑して、竜次郎が体を密着させてくる。軽く体重をかけて擦られると、ぬるぬるして確かに気持ちいい。 「ん……っ、ぬるぬる、する」 「店なんかじゃうつぶせにしてから始めるんだけどな」 「竜次郎……してもらったこと、あるの……?」 「ねえよ。一般教養だ」  まさかそんな一般教養が……。 「竜次郎の一般教養は広……っん!」  下半身を擦り合わせながら、胸を撫でられてぴくっと震えた。  既に固くなっていた胸先は、くるくるとからかうように弄ばれるとじんじんと疼いた。擦れて痛むのを心配しなくていいせいか、いつもよりも強く捏ねたり引っ張られたりして、切ない心地よさに声が出てしまう。  お互いの硬くなったもの同士もぐりぐりと擦れて気持ちいい。 「いいか?」 「うん……、んん、」  ぼうっと頷くと、乱れた吐息ごと唇を奪われる。食いつくように深く蹂躙されて、誘い出された舌を強く吸われれば、頭の奥と腰が痺れた。  ほんの少しだけ、いつもより荒っぽい気がするのは竜次郎が自分で言っていた通りに憤っているからなのだろうか。  あの時、湊は湊自身ががそうして欲しくなかったから竜次郎が拳を振るうのを止めた。  だから竜次郎も、遠慮などしないで欲しい。  このまま二人で果てれば、竜次郎は気を遣ってそこで終わりにしてしまうかもしれない。 「は、…っりゅ、じろ、」 「ん?」 「これ、きもちい、けど、…りゅうじろ、の…ほしい」  ちゃんと最後までしてほしいと、とろんと滲む視界で強請って、湊はぬるつくそこに手を這わした。

ともだちにシェアしよう!