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第8話
目が覚めたら、布団の中だった。
ここはどこだ?
見慣れない天井を見上げてぼんやりと考える。そうだ、祖母の家だ。
寝返りしたら窓の外にかなり傾いた太陽が見えた。
着いたのは昼前だったはずだ。掃除に来たら座敷童と名乗る男がいて…。
その先は思い出したくなかったが、一気に思い出してしまい、俺は頭を抱えた。
本当に座敷童だったのか。
でも俺の知る座敷童は着物姿の子供だ。人のいない部屋でいたずらするが家に幸運をもたらすと言う。俺に見られたから育ったみたいに話していたが、座敷童が育つなんて聞いたことがない。
…本当に座敷童認定していいのか?
もしかしたらこの家に住みついた不法侵入者だったのかも。祖母がいない間にこっそり忍び込んだとか。
でもあいつは祖母の名前を知っていた。俺の名前も、十歳の夏休みに急に帰ったことも、好きだった駄菓子も。
何よりおかしな力で俺を動けなくした。
俺の常識は座敷童説を否定したがるが、目の前の事実がその存在を認めろと言う。
仮に座敷童だとしたらこの先もここにいるのか?
勘弁してくれ。見えないならまだしも実在する妖怪と一緒に住むなんてありえない。
いくら俺がお人好しでもそれは無理だ。
盛大なため息をついたとき「敏明、起きてるか?」と襖が開いた。おそるおそる顔を上げると男が立っていた。
「なんか、光ってる?」
「うまい生気をたっぷりもらったからな」
舌なめずりしそうな様子で俺を見るから、一気に頬が熱くなった。
「その話はするな」
幽霊のようだった男はいまや黒髪が光を弾いて、晴れ晴れと笑う顔はつやつやだ。
「えーと、これからもここに住むつもり?」
「当然だろう」
「よその家に行く気はない?」
「なぜ?」
驚いた顔をするから俺は返事に困る。
迷惑だって言っていいのか?
…直球過ぎるか。
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