3 / 6
第3話
それからというもの、密さんは一人暮らしに不慣れな俺に色々と世話を焼いてくれて、俺はその好意にありがたく甘えさせてもらった。
詳しい年は聞いていないけれど、一人暮らしは長いらしくそれなりに年上なのだと思う。ただいくつと言われても驚かないくらい、密さんは年齢不詳のお兄さんだった。
そんな、年齢も仕事も謎の密さんだけど、一つわかっていることがある。やたらとイケメンの友達が多いこと。
最初に会った聡史さんはわりとよく見るし、他にもインテリ系だったり外国人だったりと密さんは交友範囲が広い。確かに密さんは俺と違ってとても社交的だし、いつも明るくおしゃべりも上手いからから友達が多いのも納得だ。それでも来客があるわりにわいわい騒ぐような子供じゃないし、酔って暴れるなんてこともなくて、そういうところはやっぱり大人だと思う。密さん曰く、ここはアパートにしては壁が厚いから聞こえないだけだよ、らしいけど、そうやって気を遣ってくれるところが大人だと思う。
ただ、そんな密さんに対して俺が申し訳なく思うのは、ぶっちゃけた話密さんを見るとエロい気持ちになるということだ。
親切にしてくれているお隣さん相手にこんなことを思うのは本当にどうかと思うし、たぶん慣れない新生活で俺がおかしくなっているんだとは思うけれど、それにしても密さんは存在がエッチだ。セクシーというよりエッチ。
特に直接的ななにかがあるわけじゃない。服装もすごく露出が多いわけでもない。ただ緩いシャツからたまに覗く鎖骨や手元、指先、足首なんかがどうにもセクシャルな匂いがして困るんだ。何気ない仕草や顔にかかる髪の毛、長いまつ毛を伏せる瞬間に朝会った時の挨拶までふとしたタイミングでどきりとしてしまう。もっとはっきり言えば、どうしようもなくムラムラするときがある。
男相手に異常だということはわかっているつもりだけど、むしろ女の人だったらこうも無防備に距離を詰めてこないだろうから男ならではの悩みというか。
普段は、料理を作る途中で調味料が足りないことに気づいては、よく俺の家に借りに来てお礼にとお裾分けをくれる、本当に助かるお隣さんなのに。
そんな綺麗で優しいお隣さんの密さんに、邪な思いを抱いてしまう自分をまずいとは思いつつも、距離を取ったり彼女を作ったりという積極的な解決策を講じられるほどまだ新しくなった生活に余裕はなくて。
結局は毎回煩悩を振り払いながらも密さんの優しさに甘えていた。
ともだちにシェアしよう!