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第7話

新月なのだろうか。 深くて暗い林に広がる、静寂な闇。 遠くから、ザクッザクッ…という奇妙な音が響く。 「……」 僕の頬を撫でる、生暖かい風。 肌に纏わり付く、じっとりとした汗。 先輩が後ろのトランクを開けると、布に包まれた荷物を片肩に担ぐ。 ……やっぱり。 担ぎ上げた感じからして、人間だ。 しかも……女性。 「おい、お前らっ」 レーザー光の如く、懐中電灯の眩い光が一直線に闇夜を切り裂く。 草木を分け入ったその先に、大きなシャベルを持ち、地面を掘っていた男──幹部候補生二人の姿が浮かび上がり、眩しそうに顔を顰める。 「……できたか?」 「はい」 二人の返事に「よし、」と漏らした先輩が、足元に荷物を下ろす。 「柚木」 振り返った先輩が、僕の名を呼ぶ。……と同時に、驚いた様子で候補生達の肩が大きく跳ね上がった。 「お前も下ろせ」 「……はい」 言われるまま、担いだ荷物をそっと下ろす。 二つ並んだ、ミイラのような物体。 その場にしゃがみ込んだ先輩が、覆われた布を徐に捲る。 「……こいつ、想像以上に強くてな──」 露わになったのは、見知らぬ男。 厳ついゴリラの様な体格に、原始的な顔立ち。 例の男だと直感する。 「居残りの三人はボッコボコにやられるわ、コイツらはビビッちまって加勢出来ねぇわ。……その間に、女に逃げられるわわ。 ……散々すぎて、ムカついてよ。 つい、やっちまった。 ──包丁でな」 ゾクッ…… 蒸し暑い筈なのに、背筋が凍りつく。 震えが、止まらない。 「……」 ずっと……布に包まれていたのは、あの女性二人だとばかり思っていた。 何かの弾みで、死なせてしまったんじゃないかと。 だけど、さっき……聞きまちがいじゃなければ…… 二人は、逃げたって…… ……じゃあ、僕が運んだのは……

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