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第9話

さわさわさわ…… 風に靡いた木葉の擦れる音。 闇夜のしじまに不気味な程響き渡り、大きく渦巻いて僕を一層絶望に陥れる。 「むしゃくしゃしてたしな。柚希でいいから一発抜いとくかって思ってよ……寝室に入ったら……」 微動だにしない柚希。 裸体を曝け出したまま……開ききった、瞳孔── 「打ち過ぎたんだろうな。急性中毒ってヤツだ」 ………そん、な。 僕が、ビールを買ってくる……たった四、五十分の間に。 そんな、事が── 「ああ、クソ。モヤモヤが収まんねぇ。……死体でもいいから、一発ヌいとくんだったな」 先輩が、不穏な言葉を漏らす。 男。そして、柚希。 二つの遺体を並べて、地中に埋める。 「これで、お前も共犯だな」 ……死体遺棄。 僕の心に重くのし掛かる重罪。 消えない罪悪感。 もう……後戻りは、できない── 「……それから暫く、皆でこの合宿所に籠もって……テレビや携帯でニュースをチェックしながら脅える日々が続いた。 でも……殺伐とした空気に耐えられ無かったんだろう。幹部候補の二人が、隙を見て逃げ出して……それけら、木下先輩と他の候補生二人が、一緒に買い出しに行ったまま戻って来なかった。 結局、僕は……渡瀬先輩と、二人きりになって……」 喉が渇いて張りつき、声が掠れる。 軽蔑、しただろう。 実は僕も、犯罪に加担していた……と解って。 「……」 泳いでいた視線を山下に定めるものの、意外にも山下の表情は、最初と殆ど変わってはいない。 人を殺め、埋めたという罪悪感は、相当なものだったのだろう。 先輩は、次第に壊れ始めていった…… 「柚木」 先輩が僕を呼ぶ。 風呂掃除をしているとドアが開き、突然、全裸の先輩が浴室に押し入ってくる。 「一緒に入るか」 「……な、何言ってるんですか」 最初は、何かの冗談かと思っていた。 重苦しい空気を、一蹴したいのだと。 ……でも、そうじゃ……無かった。 「いいだろ」 僕を背後から抱き締め、身体中を厭らしく弄った後、裾を捲り上げ、中に手を差し込む。 「……先ぱ」 「させろよ」 目が、おかしい。 「俺さ、ずっとシてねぇから溜まってんだよ。 ……いいだろ、ゆずき」 硬くなった下半身を僕に押し付けた後、手首を掴み上げ、壁際まで追い詰める。 そして……重なる、唇。

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