5 / 19

Ⅰ 嘘つきの恋④

俺はフルメタルアーマーの花嫁になった。 って!ちょっと待ってー! 「どうしたんだい?陰毛の色、まだ気になってるのかい?」 「そうじゃないわーッ」 「お兄ちゃんが嫌なのだろう。じゃあ夫婦になるしかないね」 「俺はお前……いや、あなたを」 「愛している」 冷たい甲冑なのに…… 熱に震えたんだ。 鼓動が打たれてドキドキが止まらない。 「心音が速い。怖がらせてしまったね」 そうじゃない。 あなたはどうして察しがいいのに、こういう時だけ…… 「君を護る騎士だと。そう考えてはくれないか。君はどうしても私と関係を持つ必要がある」 言わずとも分かるね? そう…… (俺は) (君は) 「私の妻とならねばならない」 「ならなければ、俺は処刑される」 俺は敵国の皇太子だ。 形だけとはいえ皇族には違いない。 「《ブロイエ ファルケ》の名の元に命じる。汝は生きろ」 空色の羽が揺れた。 朝陽を浴びた羽が空に羽ばたいているみたい。 「あなたは……」 「お前でいい」 「でも」 「夫婦は同等。私達は皇族同士だ。上下関係はない」 《空色の鷹-ブロイエ ファルケ-》と呼ばれるあなたは、カイザーライヒ=プレヤーデン次期当主 第一皇位継承者 「グランツ・プレヤーデン様」 「『様』はいらない。夫婦は同等だと言ったろう」 「でもっ」 仮初めの皇太子の俺とは格が違う。 「命令するんだ。君が私に……私が君にそうしたように」 冷たい金属が反響する。 腕から解放された俺の前に、白銀の甲冑が膝を折る。 場違いだ。 こんなの馬鹿げている。 こんな事をしたって、俺の命はあなたの手の中。 虜囚の俺なんて、いつだって手にかけられるくせに。 あなたは嘘つきだ。 「《ブロイエ ファルケ》の名の栄光を称え我、汝に命じる。 汝よ、主君(あるじ)を護れ」 「Yes(イエス), your(ユア) highness(ハイネス).」 お前は嘘つきだ。 嘘つきのくせに…… キスはどうしてこんなに熱いのだろう。 手の甲に施された誓いが鼓動を蝕む。燃えるように、焦がれるように。 皇族であった時ですら、こんなふうに俺を見てくれる人はいなかった。 嘘だと分かっていても 白銀の仮面の下のお前は、俺を見てくれている。 「俺を護れ。俺は、お前の主君だ」 どうか今だけは顔を上げないでくれ。 偽りの主君だけど。誓いを立てるお前に、こんな顔は見せられない。 泣いたらダメだ。 偽りでも、俺は皇族なのだから……

ともだちにシェアしよう!