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Ⅰ 嘘つきの恋⑥
『ハフー!お風呂、行ってきまーす!』
『君っ』
『寝汗かいちゃったみたい』
ほんとは違う。
これ、冷や汗だ。
あのまま流されてたら、俺!俺!
朝からイチャイチャ
寝室で、ベッドの準備は万端で
朝からフゴフゴフゴ~
ブクブクブクブク~~
危ない!
湯船に沈むところだった。
グランツに『生きろ』って命じられたのに。
朝のコーヒー事件から2時間、俺はまだ湯船の中にいる。
『一緒に入るぞ。夫婦は一心同体だ』
……なんて訳分からない事を主張するグランツを振り切って、俺はまだ湯船の中。
うぅぅ~、のぼせそう。
そろそろ上がっても大丈夫かな。
グランツは次期皇帝だ。早々暇でもあるまい。とっくに政務に戻ったろう。
うぅぅ~、長湯した。足元にふらふら、ふわふわだ。
……体拭いて、ベッドに横になろう。
知りたいよ。
お前の本心
お前は俺の騎士にして、次期皇帝
なのに、どうして俺なんかに。
なんの利用価値もない仮初めの……それも敵国の皇族に。
『生きろ』と命じた?
仮面の下のその顔を……
瞳を見たら、お前に近づけるだろうか。
お前の本心に。
あの仮面を外したら……
「いけないね。君は悪戯だ」
息すら奪われた。
お前の口に、舌に。
舌が、歯を、口腔を、舌と舌を絡めて息もできない。
「私に隙を作らせるなら、これくらいはしないとね」
ハァハァハァ
まだ呼吸を紡げない俺の口を、グランツの舌がペロリと舐めとる。
お前の背後に天井が見える。
俺、組み敷かれてるッ
「なんでお前っ、政務は?」
「行ってきますのキスもなしにか?私は薄情な夫じゃないよ」
「まだ結婚してない!」
「式を挙げるんだから、新婚さんの練習をしないとね」
「俺とお前が新婚さん~」
ハフー!頭に血が昇る~
「昴……手をどけて。顔を見せてくれないか?」
「やだ」
「仮面を外したよ」
えっ
「私の素顔が見たいんだろう」
(見たい)
お前の本心に近づけるのなら、なんだって!
チュウゥー♥
(あれれれれー)
なんでキスが鉄の味なんだ?
「君とキスがしたくてね」
仮面越しの吐息が耳を撫でた。
「嘘つきですまないね」
お前の本心はどこにあるのだろう。
本心が欲しいと求めてしまった俺は、お前に……
(恋を)
してしまったんだ……
愛しくて、切ないこの気持ちがきっと
初恋
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