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【6】-1
連休明けのキャンパスをいつもの六人と歩く。
中庭のベンチで、小柄な彼女が一人でパンを食べていた。ヒソヒソと笑いながら通り過ぎる六人を離れ、新吾は彼女に近づいた。
「あのさ。それ、連休前に出た課題?」
「うん。そうだけど……」
「ちょっとわからないところがあるんだけど、聞いてもいいかな?」
「うん」
素っ気なく答えた彼女の隣に腰を下ろした。六人が遠巻きにじっとこちらを見ている。
「あの人たち、いいの?」
彼女が聞いた。それには答えず、新吾は英語のテキストを開いた。
「ここと、ここなんだけど……」
ひと通り説明を聞き、礼を言うと「子どもみたいだよね」と彼女が言った。
「大人になっても、きっとずっとああいう人たちはいるんだろうな。でも、私も悪かったから」
新吾は彼女の顔を見た。
「つまらないことを、みんなの前で言っちゃったよね」
家に帰って話すと、「大人だねえ」と律は感心して言った。
「それで、新吾はAさんたちのこと、なんて言ったの?」
「うん。たぶん、彼らも必死なんだと思うって」
新しい環境の中で、自分の居場所を作るために懸命に場の空気を読んでいる。あの六人にはそんな必死さを感じるのだ。
「自分の居場所が見つからないやつが、いじめをするのかもねぇ」
庭の隅に作った花壇に水を撒きながら律が言う。新吾は隣でホースを手繰る係をしていた。
「なんでも人のせいにするやつや、不幸自慢するやつもだなぁ。あんまり、ひとのことばかり言えないけど」
ガサツなわりに謙虚な律だ。
「自分が幸せなら、確かに、いじめなんかしないかもな」
「新吾、大人になったよねぇ。いろんな意味でぇ」
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