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【6】-2
にやりと笑って、人の股間に手を伸ばしてくる。顔と行動のギャップをどうにかしろと、いつか律に訴えたい。
連休前に唐突にキスをしてから、なぜか一つ一つ相談しながら律との関係を深めてきた。
そして、一昨日、ついに、いきなり、最終段階に到達してしまった。自分が挿れると言い張る律に、ビジュアル的にも体格的にもそれはないと押し切って、我慢がきかなくなった新吾が先に童貞を捨てた。
受け入れた律は童貞を捨てたことになるのか、そのへんの扱いについてはよくわからない。
「それにしても、林檎のあやかしってさあ……」
「なんだよ」
「ウケるだろー」
「律にも責任がある」
結論から言うと、林檎の木は飛梅的ミラクルを発動したわけではなかった。律の家の林檎は以前からあったし、裏山の林檎の木もちゃんともとの場所にあった。
「お母さんも、しっかり探してくれればいいのにねえ。息子が大恥かいたよねえ」
秘密の隠れ家にしていた場所なのだから、行ったことも見たこともない母に探せと言うほうが酷だ。そこまで重要な任務だとも思わなかっただろう。母に責任はない。
「だけど、律。なんで律は、林檎の木にしか言ってないことを知ってるんだよ」
「聞いてたもん」
「どこで」
最初は木の上で、と律が答える。十二年前の夏、十歳の律もあの場所で泣いていたのだと。
「親が離婚するしないでもめてたんだ。母親は、なんていうか、わりと自由な人で、大恋愛の末に父と結婚したんだけど、あの村に住むには自由すぎたんだよね。それでも十年頑張って、頑張りすぎてキレちゃった」
殺す、殺さないの刃傷沙汰を起こして、大騒ぎになったという。幼く、引っ越したばかりの新吾は知らないことだったが、村じゅうの噂の的だったそうだ。
居場所をなくした律は逃げるように新吾の家の裏山に入り、あの木を見つけて登っていた。周囲が広く開けていて、そこだけ明るい雰囲気に魅かれたという。
「そしたら、なんだか小さいのが木の下に来て、寂しい、寂しいって泣き始めた。最初は面倒くさいなあって思ってたんだけど、そのうち、こいつも居場所がないのかと思ったら可哀そうになって……」
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