2 / 5
scene.1
自分が選べる道のなかで、一番無難そうだと選択したのが教師だった。
四月に地元から一時間ほどの場所にある高校に赴任し一か月。二年生の副担任をしながら、どうにかこうにか日々を消化している。
ペアを組む担任はパワハラぎりぎりなベテラン教師で、雑用を頼まれることが多いのは大変だったが、自分で考えろとか、自分で動けと言われるよりは、明確な指示を貰うほうがやりやすい。
周りの教師、生徒、独り暮らしの部屋、ゴミ出しは月曜と木曜。僕のボードに降ってきたたくさんのピースを、うまく嵌る場所を探して、穴を塞いでいく。どんな模様が現れるかもしらないまま、そんな日々を過ごしていた。
「先生! こっち、こっち」
「え、あ…………なに?」
見覚えのある生徒に肘を掴まれた。
下校時刻間際。帰宅を促すための見回りをしている最中だった。後ろから走ってきた高遠は僕の肘を掴み、その勢いのまま体を引っ張る。
高遠は派手なグループに属している生徒で、学生時代の自分なら絶対関わり合いにならないタイプだ。しかもグループの中でもひと際高遠は目立つ。長めの髪は校則ギリギリな明るい色に抜かれ、後ろに流しているせいでいつも形のいい額が丸出しになっていた。
くっきりとした顔立ちは精悍に整っていて、肉食獣のような佇まいが独特だ。当然周りをたくさんの女子が取り囲んでいる。そんな高遠がなんの用か。
僕はたたらを踏みながらも高遠の勢いに合わせて足を運び、気づけば今は使われていないはずの教室に押し込まれていた。
平均から少し欠ける身長と筋肉の少ない僕の身体は、成長期を思う存分使い切った高遠の思うままに動かされる。
「先生好き。だからやらして」
「は…………」
まるで感情の籠らない告白と、宣言。
放り出された先には、どこから持ち込んだのか、不用品としてこの教室に押し込まれていたのか、一畳分の畳が敷かれていた。
突然のことに受け身なんか取れるはずもなく、背中をしたたかに打ちつける。その衝撃で息ができなくなっている間には下着ごとズボンが下ろされていた。
「ほっそ……色も白いし、ちんこピンクだし。先生童貞?」
なにを言われているのか。
息ができない苦しさと、わけのわからない状況と、すーすーする下半身が僕をパニックに導いた。
何をすればいいのか。どうすればいいのか。
考えないといけないと思うのに、現実的な打開策がなにも浮かんでこない。
冷たい感触が肌を濡らした。
氷水でもかけられたみたいな刺激に体を震わせると、その濡れた股の間になにかが押し付けられた。
「なかなかセクシーな顔してるけど……先生もこういうの好き?」
ぎゅっと身体が丸められた。両ひざの後ろを高遠の手が握り、僕の胸に近づけるように押しつけた。まだ息の整わないうちに、ぐっと胸が押しつぶされる。
腰が浮いて不安定な状態でいる僕を、高遠が突き上げるように押した。
──いや、違う。
高遠が動くたびに、股の間で硬いものが擦れる。僕の体温よりずっと熱いものがにゅるにゅると内腿を擦り、その先にある僕の睾丸やペニスまでも擦りあげる。
まさかと思って視線を向ければ、白い腿の間から律動に合わせて赤黒いものが顔を覗かせた。
「いいねその視線……もっと見ろよ。自分がやられてるとこ」
ぬちゅぬちゅと音が立ち、窮屈な体制がもっと窮屈になった。もっと見ろと言いながら、言葉に反して高遠は体制を前のめりにする。そのせいで腿の内側を覗くことはできなくなったが、窮屈になった股の間を擦られる感触は強くなった。
──あ、勃ってる。
刺激に促されたのか、僕の股間は無理矢理に押さえつけられ、オナホールのように扱われているというのに、快楽を拾っていた。
腿と腹に挟まれ、上から押しこむように突かれると、窮屈な場所でペニスも睾丸ももみくちゃにされる。ぬるぬるとした感触がイイのか、他人に触れられているのがイイのか、気がつけば暴発寸前まで膨らんでいた。
「あー……やば、いく」
高遠のペニスがぐんと大きさを増した。突然膝を放り出されたかと思えば、熱い飛沫が顔を濡らした。二度、三度。高遠がペニスを擦るたびに飛沫は飛び出して、僕の顔に散った。
「うわ……やっば。鬼畜。両刀なのはまあいいんだけど、無理矢理やんのが好きってのは結構やばいだろ。おまえいつもそんなことしてるわけ?」
「女にはしないって。後が面倒だから。けど、なんか先生の顔見てたらそうしてやるほうが喜ぶかなって」
「ぶは。顔射してやったら喜ぶとか、どんなサディストだよ……っと、喜嶋ちゃん勃ってんじゃん。ありゃ。これは本気でドMかも」
睫毛に落ちた白濁のせいで視界が悪い。幸い目には入っていないが、変に動けば睫毛の隙間から落ちてきそうだった。
その不良な視界には生徒の姿が三人。ひとりは高遠だとして、あとのふたりは誰なのか。
「動画撮ったんで、口外したらこれ、拡散されちゃうかもね、先生」
高遠じゃない声がこのことを誰にも言わないほうがいいとくぎを刺す。ぱたぱたぱた。上履きの音が遠のいて、ぴしゃりと扉が閉められた。
校庭に向いた窓のひとつだけ、カーテンが開いている。動画を撮るのに明るさが必要だったのだろう。
汚され、取り残された僕は、微熱を帯びた身体の中心部分に手を伸ばす。
そこはまだ硬く、熱い。
高遠が零したものか、股の間に塗られた潤滑剤なのか、手に包めばぬるぬるとしていた。そこを思い切り扱く。
──気持ちいい……。
軽い刺激でそこは簡単に臨界点を超える。
淡い色のペニスから飛び出した白濁が、興奮で波打つ腹に落ちた。
ともだちにシェアしよう!