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第5話

「助けられてよかった。昨日君の美しい泣き顔を見てから、ずっと頭から離れなくてね。あぁ、でもその戸惑った表情も素敵だね。無防備に開いたその唇に口付けをしてもいいだろうか?」 「へ、えっ?!!」 「拒まないというのならいいのだろう?ほら、目を閉じて?」  な、ななななななななな何を言ってるんですか!!!  びっくりしすぎて声が出ません。  生徒会長さんの顔がどんどん近くなってきて腰にも手がまわる。 「かいちょーさーん!!アレ回収したし帰ってもいいー?……あっ!やべっ!!」  副会長さんの声がして近付いてきていた生徒会長さんの顔が唇にあたるスレスレで止まった。 「…チッ!!空気を読め馬鹿野郎!!」 「えー…でも俺すぐ帰りたかったしぃ...そんな喋ったことないやつと二人きりになって普通さっそくラブシーンとかありえないっしょ」  その言葉で僕はハッと我に返った。  何流されてるんだ!!  ずずずっと生徒会長さんの悪の手から抜け出す。すると生徒会長さんは悔しそうに綺麗な顔を歪めて、 「馬鹿副会長!!お前のせいで私の計画が台無しだ!!」 「はぁーっ?!お前の計画って襲われてるところ助けて据え膳頂こうぜってアレだろ?!吊り橋効果がどーのこーの言ってたけどそもそもこの子お前が来る前に倒してたじゃん!」 「ばっか!なんでそれを此処で言うんだ!!」 「うるせえ!馬鹿はお前だ!!」  二人の言い争いに困惑する僕。計画?吊り橋効果?据え膳?  とりあえず距離をとろう。音を立てないようにゆっくり後退する。 「あっ、お前のせいで逃げられたじゃないか!」 「知るか!!一生逃げられてろ!!」 「それは嫌だ!!」  何故か距離をとったのがバレた。怖い。そして生徒会長さんと副会長さんは言い争いをまだ続ける。  ……もう僕帰っていいかな。一応傷心中なんだけど。  生徒会長さんの方をじっと見ると勢いよくこちらに振り向いた。びっくりした。言い争いしてた副会長さんも驚いてる。 「私をそんなに見つめないでくれ。照れてしまうだろう」 「えっ、そういうつもりでは……あのぅ…」 「なんだね!!」 「もう僕帰っていいですか…」 「あぁ、そうだね。副会長とのくだらない争いに巻き込んですまない。さぁ、一緒に帰ろう」  ギョッとした。 「僕一人で帰れます!」 「そんなこと言わずに。もう遅いし心配だ」 「いや、別にそんな遅い時間でもないだろ。それにお前と帰る方が不安だろ」 「そこ!うるさい!!」 「お前がな」  なんだか不安だなぁ…。外は暗いわけでもない、夕焼け空が綺麗だ。  このあと、流されに流された僕は生徒会長さんと一緒に帰った。  ついでに言うなら次の日の朝、登校しようと玄関のドアを開けると生徒会長さんがいて一緒に登校した。 どうしてこうなった。 (終わり)

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