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第4話

『酒は飲んでも飲まれるな』 前人の素晴らしい教え。 帰宅後。己の行動を分析、反省し、二度と同じ過ちを繰り返さないと心に誓った俺が辿り着いた標語だ。 チューハイはコップで四杯まで。 勧められるがままに飲んでは駄目。 限界突破は昨日で封印。 これさえ守っておけば身を滅ぼす事はないはずだ。 少なくともお酒では。 お酒で躓かなければ、まぁ、大丈夫。 だって俺。吸わないし、賭けないし、買わないし。 恋人関係で躓いているけど、大丈夫。俺、強い子だから。 そう自分を鼓舞した翌日。仕事から帰るとマンションのドアに「クソホモ」「ビッチ野郎」などの誹謗中傷の張り紙がされていた。 マンションの住人だろうか? いや、恋人にマンション前まで送って貰った事はあっても家に招いた事はない。勿論家で行為に及んだ事もない。 じゃあ、これまで付き合った誰かだろうか? いや、自慢じゃないが、俺は素行がいい。 一夜限りや遊びの関係なんて一度もない。 分かれる時はきちんと話し合い、キレイに分かれた。 まだちゃんと分かれられていないのは坂上さんだけだけど、あの人がこんな事するとは思いたくない。 俺がゲイだと知っている人間はゲイバーのママとそのお客さん。だが、どちらも俺の家など知らないし。 なら、沢渡さん? それこそない。彼にはこんな事をするだけの感情が俺に対してない。 うーん。考えるだけ無駄か。 ネット通販で監視カメラでも買おう。 そう結論付けてその日は終わった。

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