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第19話

 数日後、仕事から帰って来た片桐がリビングのソファで俺を呼ぶ。 「なに?」 「バイト先の候補を見て下さい」 「へぇ、どこどこ?」  ここですとノートパソコンの画面を開いて見せてくれて、俺は自分から片桐の隣に座って画面を覗き込んだ。  晴天の空の下、大きな倉庫の前にピカピカの二トン車と大型が並べられた写真は運送会社だと一目で分かる。 「この会社は藤堂の関連会社です。運送屋なんで当然ですけど、全国に営業所が散ってます」 「うんうん」 「朝霞様は免許をお持ちでは無いので、ここに倉庫番アシストとして入って下さい。出来ますか?」 「やる」  言い切った俺に、隣から片桐が心配そうな目を向けて来る。 「男社会の体力仕事ですよ?」 「いつから行けるの?早く行きたい」 「楽しみなようですね。ちょっと落ち着いてよく話しましょうか」  そう言った片桐がパソコンの画面をパッと最小化してしまい、俺の視界からバイト先のホームページが消える。それと同時に片腕を軽く引かれて、片腕の方を見るよう促された。 「ご自身の情報は漏らさないようにして下さい。約束出来ますか」 「そりゃ当然。こんな複雑なのどう言っていいか分からないよ」  俺は元の浪人生に戻ってバイトに行くんだ。藤堂とかそんな物は関係無いし、その自覚も無い。 「それから、バイト先で何があったかとか、毎日私に必ず報告していただきたいんです」 「それも過保護?」 「なんですか、過保護って。保護者代理ですから何かの時は把握していないと困ります」  あぁ、そうだった。最もだ。普通に親子間なら言わなくてもいいことも、俺と片桐の関係だと微妙だ。片桐は片桐で二郎さんへの報告義務も有るのだろう。 「分かった」 「門限は業務終了から三十分、飲み会参加は何があっても許しません。未成年者は酒の席に最初から出ないこと」 「はい」 「それから……」 「まだ有るの」  聞いててうんざりして来た。なんで片桐はこんなに固いんだ。 「ここが一番大事です」  仕方ない。他所様の世話になっていて、外に出るのだから迷惑のかからないようにしないといけないと、一番大事のセリフに俺は気を引き締め直した。 「誰か好きな相手が出来た。なんて言い出した日には殺しますよ」  片桐はおかしい。

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