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Please say yes:眠れる森の王子様4
***
「それにしても、どうして病院に来たんだ? ナイスすぎるタイミングだったから、尚更驚いたんだけど」
一緒に病院を出た透馬に、疑問を投げかけた。
「だって兄ちゃん、ここんとこ家でも、ずっと考えこんでて心配だったんだ。あの転落事故は偶然兄ちゃんが傍にいて、運悪く助けられなかっただけなんだろ?」
「そうなんだけどな。でも助けられなかったのは、事実なんだから……」
「そんな兄ちゃんのこと、こっそりつけたら突然、病室から殴られる音が聞こえてさ。開けっぱなしの扉から覗いたら、ローランド王子に掴まれてる姿を見て、カッとなっちゃった」
頭を掻きながら、照れたように言う。
「ローランド王子は、お前と同じで兄貴思いなんだな。あんな風に涙、流してさ」
俺が思い出しながら言うと、なぜか顔を赤らめた透馬がぽつりと呟く。
「何か……映画のワンシーンみたいに見えた」
「ん、そうだな。外人は何をやっても、様になるから」
言いながらアンディと過ごした、短い日々を思い出す。
俺の机に長い脚を組んで格好良く座った姿も、頬杖つきながら俺に愛してると言った姿も、涙をこぼしながらバイバイと言って、階段を落ちていった姿も全部、映画のワンシーンみたいだった。
「兄ちゃん、元気出せよ。きっとその内、目が覚めると思うから」
「有難うな。今日は助けられてばかりだ」
少し背の低い透馬の頭を撫でてやると、その手をバッと弾かれた。
「いつまでも子供扱いすんなよ。兄ちゃんがしっかりしないから、いけないんだ。まったく!」
多分照れ隠しなんだろう、顔をさっきよりも赤らめて、ぶーっと口を尖らせる。こういうトコが、まだまだ子供だと思うんだけど。
いつもはひとり寂しく、帰ってた帰り道。透馬のお蔭で、暗い事を考えずに済んだ。
――きっとその内、目が覚める――
その言葉のお蔭で、明日も病院に通おうと思えたのだから。
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