9 / 38

Please say yes:眠れる森の王子様4

*** 「それにしても、どうして病院に来たんだ? ナイスすぎるタイミングだったから、尚更驚いたんだけど」  一緒に病院を出た透馬に、疑問を投げかけた。 「だって兄ちゃん、ここんとこ家でも、ずっと考えこんでて心配だったんだ。あの転落事故は偶然兄ちゃんが傍にいて、運悪く助けられなかっただけなんだろ?」 「そうなんだけどな。でも助けられなかったのは、事実なんだから……」 「そんな兄ちゃんのこと、こっそりつけたら突然、病室から殴られる音が聞こえてさ。開けっぱなしの扉から覗いたら、ローランド王子に掴まれてる姿を見て、カッとなっちゃった」  頭を掻きながら、照れたように言う。 「ローランド王子は、お前と同じで兄貴思いなんだな。あんな風に涙、流してさ」  俺が思い出しながら言うと、なぜか顔を赤らめた透馬がぽつりと呟く。 「何か……映画のワンシーンみたいに見えた」 「ん、そうだな。外人は何をやっても、様になるから」  言いながらアンディと過ごした、短い日々を思い出す。  俺の机に長い脚を組んで格好良く座った姿も、頬杖つきながら俺に愛してると言った姿も、涙をこぼしながらバイバイと言って、階段を落ちていった姿も全部、映画のワンシーンみたいだった。 「兄ちゃん、元気出せよ。きっとその内、目が覚めると思うから」 「有難うな。今日は助けられてばかりだ」  少し背の低い透馬の頭を撫でてやると、その手をバッと弾かれた。 「いつまでも子供扱いすんなよ。兄ちゃんがしっかりしないから、いけないんだ。まったく!」  多分照れ隠しなんだろう、顔をさっきよりも赤らめて、ぶーっと口を尖らせる。こういうトコが、まだまだ子供だと思うんだけど。  いつもはひとり寂しく、帰ってた帰り道。透馬のお蔭で、暗い事を考えずに済んだ。    ――きっとその内、目が覚める――    その言葉のお蔭で、明日も病院に通おうと思えたのだから。

ともだちにシェアしよう!