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Come, say yes:ネットでの再会2
「兄ちゃん、起きてよ。ねえってば!」
「――んあ? 何だよ透馬……今、何時だ?」
ゆさゆさ体を揺さぶられ、しぶしぶ目を擦りながら、枕元に置いてあるスマホへやっと手を伸ばす。
「……3時ってお前、こんな時間に何で、起こされなきゃならないんだ」
「しょうがないだろ、ローランドが兄ちゃんに話あるから代われって、言っててさ。俺の部屋に来てよ」
急かすように俺の腕を引っ張り、強引に布団から引きずり出された。
ローランドが俺に話って、間違いなくアンディ絡みだろう。
「透馬……いつの間にローランドと、仲良しさんになったんだ?」
さっさと俺の部屋を出て、隣にある自分の部屋に入ろうとした透馬に話しかけると、扉を開けながら振り返り、ちょっと照れたような顔をした。
「えっと、アンドリュー王子の病院に行った次の日に、いきなり携帯に電話がかかってきて、世間話してから」
「どうしてお前の番号、分かったんだろうな」
つっこむべき問題は、そこじゃないか。
「それよりもここに座ってよ。ローランド待たせてるんだから」
勉強机の上に透馬専用のノートパソコンが設置され、モニターには不機嫌な顔をしたローランドが、じーっとこちらを見ていた。
「ロウ、兄ちゃん連れて来たよ。じゃあ俺、これからランニングしてくるから」
さりげなくローランドを愛称で呼んだ透馬は、俺の肩をポンポン叩いてから、颯爽と部屋を出ていく。
ローランドの雰囲気に、ビビった俺。透馬に放った、助けてくれの視線は、華麗に無視されてしまった。
寝起きのボサボサの髪で顔を引きつらせた俺を、呆れた眼差しで見つめるローランド。
「――相変わらず、酷い顔をしているな和馬。久しぶり」
「お久しぶりです、ローランド……。お元気そうでなにより」
以前病院で逢った時よりも、ぐぐっと威厳が増してる気がする。
「何をビクビクしているのだ、取って食ったりしないぞ。小者め」
愛情を感じるアンディの言葉遣いに対し、ローランドは辛辣な言葉遣いで俺に向かって、猛毒を吐いてると思われる。自分の大事な兄をたぶらかしてる、俺だからだろうけど。
同じ気持ちで今、ローランドをじっと見つめた。もしかして透馬に対して、好意を抱いているのではないかと、不安な気持ちになったから。
「透馬とやり取りしてるんですね。全然知らなかったです」
「ああ、いろいろ相談事に、乗ってもらっているからな。知らなかったのか?」
「初耳、です……」
交友関係に対して、わざわざ俺に報告しなくてもいいんだが――表向き一応、兄の友人の弟(しかも王子様だぜ)と交流があるのは、知らせた方がいいんじゃないか透馬くん。
俺が放つ、猜疑心を含んだ眼差しに、画面越しでチッと舌打ちした。
「貴様、激しく勘違いしてるだろ。俺にはそういう趣味ないからな!」
悪かったな、そういう趣味してて。俺はひとりの男として、アンディが好きなんだよ。
「いつもこの時間帯に逢って、話をしてるんですか?」
「俺も忙しい身だから、毎日というワケにいかないが。それがどうかしたのか?」
受験生の透馬、夜遅くまで、勉強してるハズなんだ。毎日でなくても、この時間帯は絶対にキツいと思う。友達の為にそこまで、出来るものだろうか?
「ローランドもし、透馬が告白してきたら、どうしますか?」
「はあ!? そんな事あるワケなかろう。自分がそうだからって、弟まで変な道に染めたいのかお前は」
超絶呆れたと言わんばかりに両手をW型にし、首を横に振る。
世の中絶対なんて、あり得ないんだよ。自分で実証済みだからこそ、この言葉を言ってみたのだ。
「こんなくだらない話をするのに、呼び出したんじゃないぞ俺は。お前にお願いがあってな」
お願いの台詞に、自然と顔を引きつらせた。心がズーンと重くなる。アンディのお願いの時は、ヒモになれと言われたから。まさか……
「透馬が欲しいのだ、だから説得して欲しくて」
「やっぱりっ! そういう目で透馬を見てるんじゃないか」
「そういう目って、違うのだ! あ~もう、日本語は厄介だぞ……」
何やらブツブツ英語を喋り、肩まである栗色の髪を苛立ち気に耳に掛けながら、
「透馬の体が欲しいんじゃなく、能力が欲しいのだ。俺の傍で働いて欲しくてな」
「そんなに能力、高いんでしょうかね?」
ごくごく普通の、中学生だと思うんだが。
「和馬……陰ながら透馬がお前の事を支えているのが、分からないのか? 俺に対する態度や、接し方一つとっても一級品だぞ」
昔からドジばかりしてるから、透馬に支えられてるの分かってますよ。言われなくても。
「透馬はまだ中学生ですよ、欲しいと言われてもですね」
「鉄は、熱いうちに鍛えよと言うではないか。俺が透馬の持つ才能を、最大限に引き出す事が出来るのだぞ。兄として鼻が高いだろう?」
うへぇ――俺にそんな事、お願いされても正直困る。さすが兄弟だよ、変な頼みごとをするトコが。
「ええっと、その話は透馬にしてるんですよね?」
困った顔をしながら渋々訊ねると、モニターの向こうでも同じように、困った顔をしたローランド。
「俺の誘いに、Yesと言ってくれなくてな。理由を聞いても言葉を濁して、教えてくれないのだ。何か心当たりはないだろうか?」
「そんな事、急に言われても。う~ん」
「鈍くさいお前に、訊ねたのが間違いだった、もういい。ただ透馬を説得してくれればいいから。兄のお前なら出来るだろう?」
「ちょ……それは――」
「無論タダでとは言わん。きちんと報酬前払いにしてやるからな」
サラサラな栗色の髪を揺らして、小首を傾げながら不敵に微笑む。
タダより高いモノがあるのを、俺は知ってるんだぜ。正直怖いんだけど……
顔を引きつらせる俺にバイバイの仕草をして、モニターから消えたローランド。入れ替わるように、誰かがモニターの前に映った。俺は目を見開き、その人を食い入るように見つめる。
「何の仕打ちなのだこれはっ! 目隠ししてあちこち連れ回すなんて、卑怯だぞローランド」
「欲求不満がたまって、ヒステリー起こしてる兄上に、皆が困っているんです。反省の意味を込めて、連れ回しただけですが」
「こんな事、兄にやっていい事ではないぞ!」
「今は俺の方が偉いんですから、大人しく言う事を聞いて下さい。兄上のイライラは、見ていて不愉快なんですよ」
ローランドは苦笑いしながら言うと、アンディの後ろに回り、目隠しをパッと外した。
「アンディ……」
俺がそっと呼びかけると目を見開いて、食い入るように見つめ返してきた。
「軍事衛星使って和馬を見張ってるクセに、当の本人とは電話とメールのやり取りしかしない。どうして一昔前のコミュニケーションしかしないんだか。面と向かって話をすれば、誤解だって簡単に解けるだろうに。なあ、和馬」
「それはアンディなりに、ワケがあるんです。そうだよな?」
「…………」
俺が訊ねても、アンディは固まったまま、口を開こうとはしなかった。理由はその振動で瞳に溜まった涙が、零れ落ちそうになっているから。
「和馬、お前の寝起き姿があまりに醜いから、兄上が泣きそうになっているではないか。何とかしろ!」
「ええっ!? 何とかしろって言われても」
わたわたと手櫛で、寝癖を直してみる。
「とりあえず、報酬前払い成立だからな。しっかり透馬を説得してくれよ」
アンディの後方で言い放つと、部屋から出て行く扉の音がした。
「――生和馬だ」
目を擦って涙を拭うアンディは、ワケの分からない事を言う。
「生アンディだな、久しぶり。って、昨日電話したばかりだけど」
確かに電話したけど忙しいの一言で、すぐに切られたライン。たった一言だったが、耳元に残るアンディの声に、俺は胸がじんとしたんだ。相当重症だよなぁ。
「アンディごめん。イライラさせるようなことをしちゃってさ」
「イライラなんて、全然してないぞ。俺はそんな器の小さい男ではない」
「プッ! そうだな。ごめんごめん」
「なぜ笑うのだ、失礼だぞ」
ローランドがうんざりしながら文句を言うくらいだ、かなりヒステリーを起して、周りに迷惑をかけていたんだろう。その原因を作ったのは、俺なんだから。
「アンディ、好きだよ」
「どうしたのだ、唐突に」
真っ赤になって、横を向くアンディ――何か新鮮。こうやって向かい合うのは、2か月ぶりなのだった。
「仕事中、メガネをかけてるのか?」
「どうしてメガネかけてる事、知っているのだ?」
「日本の雑誌で見かけた。ローランドと一緒に、たまたまお前が載ってたんだ。メガネをかけた、真面目な執事風を装った写真がさ」
笑いながら教えてやったら、なぜ俺まで……と口元で呟いて、黙り込んでしまったアンディ。
「その写真こっそり切り抜いて、いつも眺めてるんだぜ」
「そうか……」
「誰かさんは忙しいって言って、全然相手にしてくれないからな」
「だって和馬があんな女に惑わされるから、無性に腹が立って、その……」
「俺だって妬いてるんだぞ。どこぞの姫様を格好良くエスコートしてるお前の写真見て、ムカムカしたんだ」
「あれは仕事なのだ、仕方なく――」
「分かってるよ、それくらい。頭で分かってても、どうしようもない事あるだろう? お前もさ」
俺がモニターにぐいっと顔を近づけると、上目遣いをしながら顎を引く。
「今回の件は、百パーセント俺が悪い。ドジした上に、女子の体にムラムラして、だらしない顔もした。アンディが怒るのは、当然の権利だと思う。だがなそのイライラを、第三者にぶつける行為は、いただけないと思うんだ」
「和馬……」
「お前の中にある想い、イライラも含めて全部俺に、ぶつけてくれないか? 貯め込まないでくれよ。遠くにいるからこそ、支えてやりたいって思ってるんだからさ」
「分かった。これからはちゃんと話するから」
「忙しいの一言で、電話切るなよな。寂しいんだから、これでも」
目を細めて見つめると、ぷいっと後ろを向いてしまった。
「アンディ?」
「その顔、反則だぞ。無性に、抱きしめたくなった……」
「俺も。アンディのその背中に、抱きつきたくなった」
「――だからイヤだったのだ、顔を見たらもっとお前が、欲しくなってしまうから。離れている距離感を、直に感じてしまう」
背中を向けたまま膝を抱え、寂しそうに呟くアンディ。
「そうだな。離れた距離感を埋めたくて、24時間繋ぎっぱなしにしちゃうかもしれない。学校サボって、お前に釘付けだ」
「俺もローランド放っておいて、きっと和馬にべったりだぞ」
こちらをちょっとだけ振り返りながら、可笑しそうに笑う。その切なそうな笑顔に、胸がきゅんとした。
「そういえば報酬前払いがどうとか言ってたが、ローランドに何を頼まれたのだ?」
「透馬が欲しいから、説得してくれって言われてさ。びっくりだよ」
「ローランドが透馬を、欲しがっているのか!?」
びっくりして、椅子から落ちかけたアンディ。慌てて立ち上がって、モニターを両手で掴んで、ゆさゆさと揺さぶる。
その様子は、さっきの俺と同じだった。
「違っ! 俺らみたいな恋愛関係じゃなく、ローランドが透馬の持つ能力を欲しがってて。鉄は熱いうちに鍛えろとか言ったんだ」
「なんだ……そうか、良かった――」
へなへなと椅子にもたれて座り込み、ふと切ない目をして、天井を仰ぎ見る。
「ローランドが俺と同じような辛い想いをすると考えたら、いても立ってもいられなくなってしまった。違って良かったぞ」
深いため息を一つついて、俺の顔を見ながら微笑んだ。
だがアンディの頬笑みに、俺は頬笑みを返す事が出来なかった。
「どうしたのだ、和馬?」
「透馬がローランドの誘いを断る理由が、思いつかなくてさ。何でだろうって」
「ん……。ローランドは兄弟の中で一番、知能指数の高いヤツだからな。俺でも何を考えてるか分からないし、付き合っていくのが困難だと、思っているんじゃないか?」
「付き合っていくのが困難な相手の、相談に乗れるかお前?」
俺が難しい顔をして言うと、
「俺はノーサンキューだぞ。仕事絡みなら仕方ないにしろプライベートなら、面倒な相手にわざわざ、首を突っ込まん」
「そうだよな、やっぱり。俺は正直ローランド苦手だから、絶対に相談とか頼み事とか、無理って思っちゃってさ」
「ローランドは和馬の事、気に入ってると思うぞ。普段より口数が多いし、俺と引き合わせてくれたじゃないか」
口数多いのは、俺に毒を吐くためだと思うんだけど。
アンディに引き合わせたのだって、透馬の件があるからなんだ。報酬前払いが、この逢瀬――返金出来ない上に、ギブアンドテイクを巧みに利用しているのが、知能犯だよな。
「俺も透馬の考えてる事、さっぱり分からないから、何とも言えないんだけどさ。ガキみたいな仕草をするクセに、言動にそつがないっていうか、掴みどころがないっていうか。全部計算して、行動してるみたいな……」
「なるほどな。ローランドは透馬のそういうところが、気に入ったのかもしれん。リアリストで、無駄を嫌うから」
「リアリストねぇ。なぁこの件、説得に失敗したら、お前と別れなきゃならないとかってなったりする?」
「ローランドに言われたら、俺と別れるのか?」
憮然とした表情をするアンディに、俺はちょっと笑ってしまった。
「別れられるワケないだろ。じゃなきゃ海外なんて離れた距離の、遠距離恋愛なんかしないって」
「和馬、今日はグサッとくる、直球投げてばかりだ。どうしていいか、分からないぞ」
鼻声で呟き、また顔を背けて、モニターに広い背中が映る。
「泣くなよ、おい」
「泣いてなんか……いない」
「アンディを泣かすつもりなんてなかったんだ。離れてるっていうのに、不安な気持ちにさせて、悪かったって思って。今まで言いたかった事、伝えてるだけなんだよ。――その言葉、お前の顔見ながら、ちゃんと言いたいんだけど」
「そういうのはっ! 逢った時に、とっておいてくれって。今言われても、すっごく困るのだ」
「俺の好きなお前の顔、見せてくれよ」
「……やだ」
「頬に伝ってる涙、拭ってやりたいんだ。こっち向けよ」
「拭えないクセに、そんな事を言って!」
声を荒げたアンディが、やっとこっちを見てくれた。ウサギのように目を真っ赤にしながら、号泣している顔に胸が切なくなる。
「俺の為に何度涙、流したんだろうな。その顔も好きだけどさ、やっぱり笑った顔の方が好きだよ」
「和馬……泣いてばかりで悪かった。感情が上手く、コントロール出来ないのだ、お前が好き過ぎて」
そう言って、袖で涙を拭う。
傍にいるなら――抱きしめてやりたいのに。
「俺なんて感情どころか、体のコントロールも出来ないんだぜ。アンディの顔見た瞬間から、勃っちゃった」
俺の言葉にプッと吹き出す。やっと笑ってくれたな。
「和馬って、見かけによらずエロいのな」
「お前が俺にエロい事していったせいで、何か変わったんだよ」
「顔、真っ赤になっているぞ。可愛いな、ムカつくくらい」
形勢逆転――今度は俺が、翻弄される番になってしまった。アンディはしっかりこっちを向き、頬杖をつきながら俺を見つめる。
「和馬の感じるトコ、たくさん責めて責めて、この手で触って、イかせたい」
「そそ、そうか……逢った時にやってくれ……」
「見せてよ、大きくなってるトコ」
「なっ何言ってんだ、エロアンディ! 恥ずかしいに決まってんだろっ」
「今更何、恥ずかしがってるのだ。俺は和馬のココとかアソコを、しっかり見てるっていうのに。減るもんじゃあるまい?」
不敵に笑いながら、右手で脱げとアピールするアンディ。
どうしてエロい事に関して、こんなに積極的なんだよ。俺が言う台詞に、あんなに顔を赤くしてたヤツとは思えない。
「減るっ、俺の自尊心が著しく低下するっ! まったくお前のお願いは、どうしてこうも変なのばかりなんだよ」
「だって見たいと思ったから、言ってみたのだ。しょうがないな、じゃあ俺のを」
「見たくないからっ、んもぅやめてくれよ……」
おもむろに立ちあがったアンディに、俺は頭がグラグラした。
どうして、こうなるんだ?
こんなアブナイ状況だというのに、俺は萎えるどころか、なぜかさっきよりも元気なんですけど……
顔を引きつらせてる俺に、アンディが楽しそうな表情をする。まるで出逢った頃の様だ。懐かしい雰囲気。
「じゃあ、一緒にイク?」
「や……それはちょっと、無理だと思う。ここ透馬の部屋だし、その」
「俺だって、ローランドの部屋にいるのだぞ」
「分かってるよ、そんなの。そうじゃなくて、えっと……持たないから、俺の」
言葉を重ねる度に羞恥心で、顔がどんどん熱くなる。
「どうしてなのだ?」
「恥ずかしい事、聞くなよ。もう!」
「恥ずかしい事だろうが、何でも知りたいのだ。和馬のすべて、教えて?」
モニターの向こう側、キレイな青い目を細めて、俺を包み込むように見つめるアンディ。事実を知ったら、軽蔑されないだろうか。
真っ赤な顔を見られたくなくて、横を向きながら呟くように答える俺。
「……お前の顔見ながら、ずっと弄ってたし。その……一緒にはイケないと思うんだ」
「なっ……」
呆れられた、よな? 穴があったら入りたいっていうの、こういう事だろう。
「和馬、俺にあんな恥ずかしい事言いながら、んな事してたなんて……。何て可愛いんだ!」
「あのアンディ?」
「いや、かなり感激モノだぞこれは。あんな顔しながら、ヤッていたなんてなぁ。クソ真面目だと思ってただけに、嬉しい発見だ。愛いヤツめ、ホントに」
興奮してモニターを、両手で激しく揺さぶる。
俺はこの言葉に、何て返したらいいんだろうか?
「一緒にイカなくていいから。和馬のイク顔が見たい、いいでしょ?」
「なんだよ、それ。恥ずかしいって」
「見せてくれないのなら、しょうがない。お前に分かるまで俺の愛を示すべく、直接俺自身を見せるまでだな、うむ」
「だーっ! 見せなくていい! 頼むから、やめてくれっ」
「じゃ、決まりだな。ほれ、ちゃんと顔を見せろ和馬」
俺の返答が分かってたんだろう、嬉しそうにモニターに顔を寄せるアンディ。まったく、知能犯め。
「ちゃんと真正面に顔を向けて。俺を見て和馬……感じてるトコ見せないと、俺もイケないんだからな」
「そんなにじっと見つめるなよ。恥ずかしいから」
「ん? 目をウルウルさせて、耐え忍ぶ姿、堪らない。可愛いぞ」
舌舐めずりしながら、わざと俺を煽る様な事を言う。モニター越しなのに、アンディから伝わってくる色香が、俺をクラクラさせた。
「つっ……も、イキそう」
「和馬、こっち向いて、目を逸らすな、俺から」
「アンディ……んんっ!」
目を逸らすなと言われたけど、やはり恥ずかしさで俯きながら、イッてしまった俺。しかも溜まっていたワケじゃなかったのに、手元がスゴイ事になっている。
透馬がいつ戻ってくるか分からない状況に、急いでティッシュを探すべく、しゃがみ込んでパソコンの前から姿を消した。
「何か和馬、野ネズミみたい。ちょこまか動いて」
離れたパソコンから、アンディの楽しそうな声が聞こえる。
「うるさいな、もう。見るなよ!」
「見る見る、しっかり録画させてもらったし、これでいつでも和馬で、ヌく事が出来るぞ」
その台詞に、俺は絶句した。録画って、一体何を!?
「さて、ローランドが戻る前に、俺のパソコンにバックアップせねば。和馬コレクションがまた増えたぞ」
「おい、待てよっ! 何なんだその、和馬コレクションって?」
汚れてしまった自身を拭って、慌てて透馬のパソコンに食らいついた俺。
「和馬の動画や写真のコレクションだ。さっきのは間違いなく、秀逸な動画になるであろう。フフフ(ΦωΦ)」
「さっきのって、まさか……」
「俺と会話を始めてから、和馬がイクまですべて録画しておいたぞ。俺が直視できなかったトコ、改めてチェックして、和馬が感じている箇所を探さねば」
「探すなバカアンディ! こっちの同意なしに録画するなんて、絶対卑怯だっ!」
「まったく照れ隠ししおって。ちゃんとローランドのパソコンから、抜いてやるから安心しろ」
「そこが問題じゃねぇよ、今のも持ってるヤツも、全部デリートしろっ! 消し去ってくれっ」
「えーっ、イヤだぞ。パソコンごと、破壊しなきゃならないじゃないか」
言ってる意味、全然分かんない。
かくて俺は、何も告げずにパソコンの電源をサクッと落とした。慌ててメールや電話が入ったけど、無視を貫かせてもらう。
俺の恋人アンディの変態っぷりが、ここまでだったとは、俺も予想外だった。イヤ本当に、マジ勘弁してくれ……
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