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Come, say yes:抑えられない衝動
「透馬くん、最近付き合い悪いよね。誰か他に、好きなコが出来たんでしょ?」
帰り際生徒玄関で、学級委員をしている、隣のクラスの女子に呼び止められた。
「そう見える?」
「うん。普段そんな風にしょっちゅう、スマホを見ないし、どことなく落ち着かない感じだから」
指摘されて初めて、自分が大事そうに、スマホを握りしめてる事に気がついた。
「落ち着かない感じに見えるって事は、ずっとチェックされてたって事だよね」
「……うん、好きだから」
俯きながら答える彼女。
委員会で知り合い、ちょっと前までよくつるんでいたから、彼女からの好意が分かっていた。分かっていたから、それを上手い事利用して、Hしたのは自分だ。
「悪い、ホント俺って、イヤなヤツだよね。君の気持ちを知っていながら、他のヤツの事が好きなんだから」
「そんな井上くんの事を分かってるのに、好きになった自分が悪いんだよ。ねぇ、好きなコって誰なの?」
俯いてた顔をしっかり上げて、俺の顔を真剣な目で見つめる。さすがに、男が好きなんだとは言えまい。
「名前はちょっと言えないんだ、有名人だから。ソイツ、すっごいワガママで自分中心で、俺の事をグチや鬱憤が言える、友達としか見てなくて……」
兄貴思いで常に国民の事を考え、無理をしながら頑張って仕事してるローランド。
「報われないって分かってるんだけど、どうしても諦められなくてさ」
「分かるよ、私も井上くんの事、諦めようとしたんだけど、なかなか、ね……」
切ない顔をして俺を見る姿は、きっと俺も同じような顔をしているのかもと、何となく推測できた。
「俺のワガママに散々付き合わせて、今まで無理させたのに。気持ちに応えられなくて、ホントごめんな」
言いながら手にしているスマホを、ぎゅっと握りしめた。
相変わらずロウからは連絡がなく、スマホの無機質な感じが、俺に対する対応とリンクして、とても淋しく感じられた。
「謝らないでほしいな。井上くんと付き合えて楽しかったし、自分の事を見つめ直す事が出来て、感謝してるんだから。真面目しか取り柄がないって思ってた私を、たくさん誉めてくれたじゃない。そうやって他人から、優しくされた事がなかったから嬉しかったんだ」
泣きそうな笑顔をして、俺を見上げる彼女。
優しい言葉をかければ、かえって傷つける事になるだろう。だけど――
「俺も君と付き合えて良かったよ、ありがとな」
感謝の言葉だけは、どうしても言いたかった。
彼女の言った通り、付き合ったおかげで、気付かされる事があったのだから。こんなにも深く、ロウが好きだった事に、他人から気付かされるなんて、思ってもいなかった。
スマホをポケットに入れ、吹っ切るように生徒玄関を出た。泣いている彼女の姿を見てしまうと、つい涙を拭ってしまいそうな自分がいて。
最後にごめんと呟いて、走って学校を後にした。
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