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Come, say yes:抑えられない衝動2

 逃げるように学校を出て、真っ直ぐな道を小走りで歩き、いつものように塾に行く。変わりのない毎日、ロウからの連絡も相変わらずないままだった。  はあぁと大きなため息をついた時、後ろに人の気配を感じた。ただの気配じゃなく、殺気の様なものを肌で感じとる。  思いきって振り返ると、金髪で背の高い外国人が、俺を見降ろしていた。サングラスをかけているので、どんな表情をしているか分からないけれど、体から放っている威圧感に一歩後ずさると、いきなり後方から腕を掴まれ、口元に布が押しつけられた。 (――もう一人いたのか!? 気配がなかった……)  独特な薬品臭を嗅ぐと、体の力がみるみるうちに抜けていき、意識が遠くなる感覚に身の危険を察知した。  このままやられて、たまるかよ!  倒れる反動を利用して、右拳を前に突き出してやった。 「うっ!」  耳に男の声が聞こえ、パンチがヒットしたのが分かった。だけどもう体に力を入れる事が出来ず、そのまま歩道の上に横たわる。  体がやけに重くて動かせなかった。目を開ける事すら出来ない。どうなるんだ、一体…… 「まったく。油断してるから、痛い目に遭うのだ。お前、減給処分な」  聞き覚えのある声が、俺の耳に届いた。 「俺が見込んだ男なのだ。ただではやられないと思っていたけど、さすがだな透馬」  歩道に倒れ込んだ俺の体を抱き起こし、ぎゅっと抱きしめる。  ローランド……そう呼びかけてやりたいのに、言葉が空を切る――ってこの状況、もしかして俺はロウに、拉致られるんだろうか?  ロウに抱擁されながら、複雑な気持ちになった。本当は喜びを噛みしめたい所なのに。  そう思った瞬間、俺の意識は遠くなったのだった。

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