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Please say yes:はじめてのデート3
***
ドキドキしながら、待ち合わせ場所の駅前のロータリーに、やっと辿り着いた。
遠くからでも分かってしまう、アンディの存在――
肩よりも長い金髪を風になびかせ、目が悪くないハズなのに、何故だかメガネをかけていた。メガネをかけているせいで、シャープな輪郭がより一層際立ってしまい、目立ってしまっていることを、本人は知らないんだろうな。
カーキ色のダッフルコートを身にまとい、下は黒っぽいジーンズを穿いている姿は、足が長く見えるスタイル……まるで外国人モデルのようだ。
そんな目を惹く、風貌をしているというのに――
「手に持っているでっかい風呂敷包みは、いったい何だろうな?」
あまりのアンバランスの悪さを目の当たりにし、おっかなビックリしながら、アンディに近づいていくと。
「和馬っ! 待っていたぞ、逢いたかった!!」
風呂敷包みを手早い動作で足元に置き、俺にぎゅっと抱きついてきた。
「ちょっ、アンディ//// く、苦しいって」
久しぶりにされるアンディの抱擁。コイツ、以前にも増して身長が伸びてる。俺の頭がちょうど胸の位置だから、心臓の音が丸聞こえ状態なんだ。
突然のハグに、駆けっこしているみたいな心音や、体を包み込む暖かな体温などなど、アンディからもたらされる刺激に、頭がクラクラしてきた。
「……何だか和馬が、可愛くて仕方ないぞ。どうした? こんなに小さくなって」
「小さくなっていないって! お前が一回り以上、デカくなったからだろ」
頬に熱を感じつつ腕の中で喚いてやったら、端正な顔がにゅっと自分に寄せられる。メガネの奥の、青い色したガラス玉のようなキレイな瞳が、愛おしそうに見つめてきた。
「惚れ直してくれたか?」
以前逢ったときは、どこか少年ぽさが残った顔立ちをしていたのに、目の前にいるアンディの今の顔は、カッコイイくらいに大人の男になっていて。逆に自分がひどく、子どもっぽく感じてしまった。
「惚れ直すとか、ワケ分かんないし。いい加減、放してくれって」
素直に気持ちが言えないのは、前と変わらない。恥ずかしすぎて、どうしても言えないんだ。それにカッコ良すぎるアンディとつり合ってないことに、どこか引け目を感じてしまって、余計言えないでしまう。
アンディは何も言わず、俯いた俺のオデコにちゃっかりキスをしてから、体を解放した。
キスされたオデコを、意味なく触りながら顔を上げると、何故だか青い瞳をキラキラさせて、まじまじと俺を見つめる。
「相変わらず、愛いヤツなのだな。Yesと言ってくれないなんて」
「あの、アンディ?」
「そういう所が、俺の胸を熱くさせるのだ。変わってくれるなよ、そのままでいてくれ」
アンディのツボがさっぱり分からず、呆けたままでいる俺の腕を掴み、置きっぱなしにしていた風呂敷包みを反対の手に持って、スタスタと歩き出した。
「アンディ、ちょっと待てって」
「どうしたのだ?」
長い足を駆使して歩くアンディに、引きずられながら歩かなきゃならない、俺の短い足。少ししか歩いていないのに、もう息が切れるとか、情けないにもほどがある。
「っ……あっちから行った方が、ショッピングモールに近い、から」
息も絶え絶えの状態で告げてやると、俺が指を差した方向を見てから、再び顔を見る。かけていたメガネのレンズに光が当たって、表情が分からなかったんだけど。
「和馬、済まぬな。どうにもひとりで行動することが多くて、相手の事を考える配慮に欠けていた」
一旦、口を引き結び、繋いでいた手をわざわざ、恋人繋ぎにしてくれて。アンディの指先が俺の手の甲を、すりすりと撫でてきた。
「案内プリーズなのだ。ショッピングモールに行く道と一緒に、お前の歩調を教えてほしい」
「し、しょうがねぇな、まったく//// 手のかかる元王子様だよ」
こうしてふたり仲良く並んで、ショッピングモールに続く道へ、歩くことが出来たんだけど――
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