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5.背徳の晩餐 -4
祐仁の手がマッサージするように胸を摩擦する。
冷たさに慣れると手のひらが乳首を転がす刺激が鮮明になる。
部室で襲われたとき、こんな場所がここまで鋭い神経を持っているなど思ったこともなかったが、いままた快楽は簡単に引きだされた。
心なしか、硬く大きく尖 ったようにも感じる。
ぁ……くっ。
声が出そうになり、ぎりぎりのところで下唇を咬んで堪えた。
すると、上唇に祐仁の吐息が触れる。
「颯天、さっきキスでどうなった? 熱くて蕩 けそうだっただろう」
そう話しかける祐仁の吐息がふたりのくちびるの間で熱くこもる。
その間も、手のひらは円を描くように胸を撫でまわしている。
「知らないっ」
快楽を振り払うように叫び、けれど振り払うことはかなわず、颯天は歯を喰い縛る。
「いい反応だ。おまえはおれを見誤っている。逆らうほど苛 めたくなる。おれはそういう性分だ」
笑壷 に入った様子で云い、祐仁は颯天の前で腰をおろすと膝立ちをした。
颯天の脇腹に手を当てて距離を詰める。
胸もとに顔を寄せ、祐仁は乳首をぺろりと舐めた。
あぅっ。
椅子が音を立てて動くほど、堪えきれなかった声をあげながら颯天はびくりと跳ねた。
はじめてというだけの理由では足りない、鋭い快感が一瞬の間に躰を突き抜けた。
「やめ……う、ああっ」
止めかけた言葉は嬌声 にすり替わった。
祐仁は乳首を咥え、そうしたまま舌で自在に弾く。
祐仁が支えていなかったら椅子ごとひっくり返っていたかもしれない。
それほどの快楽に颯天はのけ反った。
そのしぐさは快楽を避けるどころか、どうぞと云わんばかりに胸を突きだすことになって、祐仁に差しだしているのとかわりない。
わかっていながらどうしようもなかった。
「本番はこれからだ。いまからどうなるんだろうな。楽しみだ」
いったん顔を上げた祐仁は興じた笑みを漏らして囁く。颯天は顔を背けた。
そうして、脇腹から放れていった手は颯天の勢いづいてきたオスをつかんだ。
くぅっ。
見なくても触れられたことで自分がどんな状態かは察せられた。
祐仁の手は温もりを取り戻しつつあり、冷たいという感触はなかった。
それとも自分が冷たすぎるのか。
「颯天」
我慢することに気を取られ、颯天は呼びかける声に応じてしまった。
祐仁を見下ろしたと同時に、そのくちびるが颯天の中心に近づきながら開いていく様が視界にクローズアップされた。
「嫌だっ」
拒絶を叫んだのも虚しく、直後。
「あ、あ、ぅっくぅ……ふっぁああああ――」
祐仁の口の中は灼熱 といってもよかった。
勃ちあがりかけていたオスがびくんと一気に膨張した。
くちびるがくびれた部分に嵌まり、先端を舌が這う。
「ああっ、熱いっ、あぅっ、あああ……っ」
颯天は身をよじって逃れることもできず、祐仁は云ったとおり苛 むように刺激を続けた。
有り余るほどの快感に颯天の理性は耐えきれず、喘ぐ声を止められない。
口に含んだまま舌は先端をぐるぐると這いまわり、熱はたまらない疼きに変わっていく。
ぬちゃぬちゃとした音はシャーベットと祐仁の唾液のせいか、颯天の耳を侵して性感を煽る。
そうして、ある場所が舌先でつつかれたとたん、蕩けていくような感覚がした。
「あ、だめだっ、そこは……っ」
そう云ったことが間違いだった。
弱点を晒したようなもので、祐仁はまるでそこを貫こうとするかのように舌先を硬く尖らせてきた。
ねじ込むように弄られ、その孔口 が解放を求めて自ら開いていくような錯覚に陥 り、蕩ける感覚は現実味を増して次第に大きくなっていく。
「朔間さっ、ああっ……嫌だっ……あふっ、漏れ、るっ」
颯天は首を激しく振って、上昇していく感度を紛らそうとした。
だが、所詮、無駄な抵抗だ。
拘束され、ましてやはじめてのことだ、颯天には快感の逃し方も耐え方もわからない。
祐仁は孔口を舌先で押し開くようにしながら激しく吸着した。
いや、実際は激しくなかったのかもしれない。
ちょっとした刺激で颯天は快感に翻弄される。
吸いだされるような感覚には耐えきれなかった。
「朔間さ、離れっ、て……ふ、ぁっ……くださっ……ぃっ」
このままだと祐仁の口の中に放ってしまう。
そんな背徳感は、耐えなければならない、もしくは逝きたくないという拒絶と逆の効果をもたらし、よけいに颯天を昂 らせた。
祐仁が離れていく気配はない。
それどころか深く口の中にオスを含んで、ねっとりとした吸着音を立てながら顔を上げていき、くちびるの裏で摩擦を引き起こす。
裏筋を親指で摩撫され、孔口に集中して吸いつかれた刹那。
「あ――出るっ」
びくんと腰が飛び跳ねた。
堰 が切られるまでの一瞬、ふわりと躰全体が心地よくくるまれて、伴い、意識までもが浮遊した。
直後、爆ぜる快楽に腰が何度も浮いては落ちるということを繰り返した。
カタカタと颯天が椅子を揺する音はやむことはない。
性遊戯はそれで終わりではなかった。
「う、わああっ……も、やめて……ああっ……やめ……くだ、さ……あああっ」
まるで爆発するように快楽を放つ間、その果てに囚 われていたが、収束していくうちに続けられている刺激に意識が移った。
颯天が放ったものを祐仁は呑み下したのか、まだ足りないといったように吸引している。
何度となく自慰はしてきたが、一度逝けば性欲は引いていく。
それがいま、また急激に押し寄せていた。
祐仁は手を上下させて扱きながら、顔の角度を変えて先端を舐めまわす。
舌は孔口で痙攣したようにうごめき、颯天の腰はびくびくしておさまることがなく砕けそうな怖れを抱いた。
放つ嬌声は叫び声とまがうようで、体内から漏れだすような感覚が大きくなっていった。
「い、やだっ……」
さっきとは違う。
そんな漠然とした、味わったことのない感覚が生まれている。
祐仁が拒絶を聞くはずもなく、無慈悲に颯天は追いつめられていく。
ひどい吸着音を立てながら祐仁は顔を離した。
それに誘導されて体内から管を通って慾 の証 しが迸 る直前、孔口が人差し指の腹で引っ掻くようにいびられた。
「くぅぁああああ――っ」
白濁した粘液が孔口から飛び散り、それを押しのけるようにしながら噴水さながらに淫水が勢いよく迸った。
それがなんなのか、快楽は陶酔するものでありつつ、つらさと裏表だということを颯天は教えこまれた。
「颯天、おれのものになれ」
朦朧 として息が絶え絶えでありながら、颯天は無自覚に首を横に振った。
その無意味な抵抗に祐仁はくつくつと笑う。
颯天は祐仁を虚 ろに見、腰が抜けたような脱力感に襲われながら、祐仁に逝かされたことを受けとめていた。
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