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8.遂げられない欲求 -4

「違うっ、おれは……っ、く、ぁあああっ」 オスの突端を包みこみ、男の手はネジをまわすようにうごめかす。 その刺激に颯天の反論はままならなかった。 手のひらが激しく孔口を刺激して、颯天はいまにも漏らしてしまいそうな怖れを抱いた。 淫蜜に塗れたそこは引きつることもなく、ぬるぬると絶妙なタッチで自らの快感を引きだす。 拘束された不自由な躰が跳ね、颯天は叫びながらがたがたと音を立てて椅子を揺すった。 男はかまわず、力を込めて突端を撫でさすり、容赦なく苛め抜く。 颯天に避ける術はない。 どうしようもなく熱で融解してしまいそうな感覚に陥った。 「嫌、だ――っあ、ああっ」 拒絶の言葉も虚しいほど、ぬちゃぬちゃとした音が耳に障る。 それがひどくなっているのは颯天が次々に蜜を溢れさせているからに違いなく、男はわざと音を立てている。 颯天を羞恥心が襲う。 けれど、それが快感を打ち消すことにはならなかった。 それほどに颯天の躰は快楽に弱い。 祐仁の調教のせいか、颯天の本質か。 果ててしまう。 そう思った時点で颯天は快楽に負けていた。 快感を止めることもとどめることもできずに感度はひたすら上昇していく。 うわぁあああっ。 腰がぶるっとふるえて跳ねあがり、精道をくすぐるように淫蜜が駆けのぼった。 出口に到達し、けれどそこで戯れる男の手のひらが孔口をふさいでいる。 わずかなすき間を見つけては吐きだすが、一度では終わりきれない吐精が快楽をこもらせ持続させた。 あまつさえ、果てからおりきれないうちにまた果てに追いやられるという、その連続だった。吐精が止まらない。 「ああっ、あうっ、あああっぐぁっ……や、めろおぉーっ、う、ぅわああっ……」 「どちらかが枯れるまでやるんですよ。それがゴールです。じゃなければ平等ではないでしょう。それにしても逝き時間が長いですね。一回でこれだけ持続すれば、あなたに勝ち目はない」 果てたのは一度ではない。 次から次に押し寄せている。 自分の手のひらがその結果を妨げていることをわかっているはずが、男は颯天を負けさせようとしている。 そう感じた。 颯天の視界は潤んで、祐仁の姿は(にじ)んでしか見えない。 嬌声も、自分のものか祐仁のものか区別がつかない。 ただ、祐仁が変わらずじっと颯天を見つめていることはわかった。 もしくは颯天の痴態を見ているのか。 祐仁は何を感じているだろう。 裏切り者の颯天に呆れてうんざりして、浅ましいとさえ思っているかもしれない。 あ、あ、ああっ……。 何度めだろう、腰が砕けたように締まりがなくなった。 ただびくびくと生理的反応を起こしている。 脳内が痺れて飽和するのも間近に迫っている。 果てしなく摩撫され、オスの突端は腫れぼったく感じるほど熱を孕んでいた。 「ほら、ブレーンU、七回め逝ってくださいよ」 そんな声が薄らと聞こえ、途絶えそうになっていた颯天の意識が戻った。 正面の無防備な祐仁の姿を見て、颯天のオスが更なる欲求にびくんとふるえた。 この欲求がなんなのか、一生、遂げられることはないのかもしれないと、颯天は漠然と絶望する。 そして、その絶望が伝染したかのように祐仁が顔を歪めた。 ぐ、ああっ。 ()えるような嬌声をあげながら祐仁は腰をねじり、びゅるっと白濁した蜜を吐きだす。 その量は少なく、一度きりで勢いもない。 祐仁もまた尽きかけているのだろう。 「まだまだ逝き足りなそうだな。びくびくしてるぞ」 颯天につく男が空いた手の指先をオスに添わせると、すっと裏筋を撫であげてきた。 融けだしていく、そんな感覚に覆われた。 「あ、あうっ、あぁっ……も……無理、だっ」 「無理をしたらどうなるんでしょう」 可笑しそうにくつくつとこもった笑い声を出し、男は突端から手のひらをずらしたかと思うと親指の腹で孔口を抉じ開けるように捏ねた。 「ああああっ……出、るっ」 今際(いまわ)の際に発した刹那、ずっとふさがれたような状態だった孔口が解放された。 …………っ――――。 精道が破裂しそうな勢いで、淫らな体液が制御不能のまま駆けのぼってきた。 颯天はめいっぱい腰を突きあげる。 白濁した蜜が淫水に押しだされ、天を突くように迸った。 すべての神経が快楽に侵され、弛緩する。 放出は永遠に止まらないのではないかと思うほど続き、目からは涙が、口からは唾液がだらしなくこぼれた。 「おい、男娼が気絶してどうする」 意識が薄らとなるなか、颯天は乱暴に現実に引き戻される。 はっきりはしないまでも、荒々しい呼吸音だけで妙に部屋が静かになったことに気づくくらいには意識が戻った。 「ブレーンU、おまえの勝ちだ。何を望む?」 その問いに、颯天は無意識に集中する。 祐仁が何を望むのか。 颯天自身、祐仁の口から何を聞きたいのか、朦朧とした思考のなかでその結論が出せないうちに―― 「おれは、Eタンクに尽くすのが、望みだ。高井戸颯天は、代償として、凛堂会に渡す。その、永礼(ながれ)組長との約束を、果たす、だけだ」 祐仁は地位保全を望み、颯天を手放した。

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