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22.走破~無自覚の求愛~ ‐2
祐仁を上目づかいで見据えたまま、颯天は口を開く。
尻をのせた祐仁の脚がこわばったのが感じとられた。
そのさきの快楽を耐えようとしたのだろうが、颯天はオスを咥えると見せかけて、その実、口をすぼめて息を吹きかけた。
同時に伸ばしていた手が、祐仁の乳首に到達し、両側をそれぞれに捉えた。
颯天は指先で乳首を抓みあげるようにしながら引っ張りあげた。
すると、祐仁の蜜でぬめっていた指先の間からするっと乳首が抜けていく。
くっ。
祐仁はびくんと胸を浮かせて呻く。
息を吹きかければ、オスはおもしろいようにぴくぴくとうごめく。
祐仁が果てるまで間もない。
そう考えるだけで颯天はますます昂る。
このまま時間を長引かせることなくすぐさま逝かせられたら、祐仁は観念するだろうか。
いや、観念するかどうかなど関係なく、思いきり祐仁を淫らにしたい。
そんな欲求に襲われた。
颯天は衝動に任せ、指先で乳首を転がした。
すぐさま粒は硬く感触を確かにして、指の腹を押し返してくる。
それに逆らうように、颯天は押し潰しながらぐりぐりと捏ねまわした。
中心では、舌を出して根元に触れ、そのまま裏筋をすーっとのぼっていく。
う、っくうっ。
歯を喰いしばったにもかかわらず、祐仁の口の端からは呻き声が漏れた。
オスのくびれに届く寸前、舌を放すと、祐仁が漏らした喘ぎ声は心なしか不満そうにも聞こえる。
オスもまたぴくりとして、もっとと催促するようだ。
もう一度同じようにすれば、オスも不満を丸出しにしてゆらゆらとうごめく。
三度め、繰り返したあと、颯天は口を大きく開き、舌で摩撫するかわりに先端へと熱い息をゆっくりと吐きかけた。
「ぐっ……やめ、ろっ」
祐仁の躰は緊張にこわばり、そうして、口をすぼめて颯天は強く、孔口を目がけて一気に吐息を注ぐ。
そうしながら乳首を押し潰して転がした。
くっ、う、わぁあっ。
祐仁は息が詰まったように呻き、叫ぶと腰をひと際高く突きあげた。
孔口から白濁した蜜が迸り、祐仁自身の下腹部を濡らす。
快楽に腰をふるわせながら喉をのけ反らせ、祐仁は何度も蜜を吐きだした。
やがて放出を終わらせると、突きあげていた腰をがくんと落とし、ベッドを揺らした。
荒く息をこぼしながら、脱力してベッドに躰を静める祐仁を見下ろしながら、颯天はさらなる欲求を抱いた。
精を放ったあとも祐仁のオスはくたびれきったこともなく、触れればまたすぐに復活しそうに見えた。
どちらが多く逝けるか競争させられたときのことを思えば、祐仁を快楽の限界まで導くには程遠い。
颯天はオスの先端部分をつかみ、孔口を親指の腹で撫でた。
とたん、祐仁はびくっと躰を波打たせて唸った。
祐仁は颯天の目を捉え、けれど、睨みつけるほどの気力は見えない。
簡単に果ててしまったことでプライドを手放したのかもしれない。
揉みこんでいるうちに祐仁の口から熱っぽい吐息があがり始め、孔口からは白濁した残滓と蜜が出てきた。
颯天はオスを放すと、祐仁の腹部に散った白い蜜を右の指先に塗す。
「颯天、ネクタイを、ほどけ」
命令するも喘ぎながらで強制力に欠ける。
ひょっとしたら颯天の意図を読みとっているのだろう。
祐仁はどこか注意深くして、息を詰めているようでもあった。
「嫌だ」
颯天は身を乗りだしながら左手をベッドに着き、祐仁を真上から見下ろした。
のぼせたようでありながらその双眸の奥には意思がひそんでいる。
なんだろう。
「何をするつもりだ」
「おれはいつも抱かれるだけだ。たまには抱かせてもらう」
さっきまで敬語を使っていたのは、部下にやられるという屈辱を与えて祐仁の颯天に対するプライドを無効にするため、それをやめたのは対等になるためだ。
従順であることに変わりはないが、命令に従っているのではなく、あくまで颯天の自由意志のもと祐仁に尽くすことを示すのだ。
清道と緋咲の会話を――永礼が云う痴話げんかを聞きながら、颯天は祐仁もまた孤独だということに思い至った。
再会してすぐ、『まだガキのままか』と云った祐仁の冷ややかさがそれを裏づけている。
春馬に嵌められて、それからどんな心境のもとフィクサーまで伸しあがったのか、その過程で祐仁がますます孤高となったことは確かだ。
「どういうつもりだ」
颯天はゆっくりと顔をおろして、ふたりの距離を近づけた。
間近で見上げてくる、きっとした眼差しもやはり迫力に欠ける。
「祐仁を堕落させる。おれは命令に従うだけのラブドールじゃない。おれの意思はおれのものだ。祐仁はそう知るべきだ」
囁くように云い、颯天は祐仁のくちびるをふさぐ。
くちびるの間に舌を割りこませても、咬み合わせた歯が邪魔をする。
祐仁の意地か羞恥心か。
颯天はくちびるをふさいだまま、祐仁の脚の間に右膝を割りいれた。
次いで左膝もそうすると、祐仁の脚を左右に広げていく。
再度、右の指先に白濁した粘液を塗し、颯天は中指を臀部の谷間に忍ばせた。
んんっ。
後孔を探り当て、入り口に触れたとたん、祐仁はびくっとしてこもった喘ぎ声を吐き、颯天の思惑どおり、伴って口も開いた。
すかさず颯天は舌を差し入れた。
勢い余って奥深くに届いたのかもしれない。
祐仁は躰をうねらせながら嘔吐くように呻き、反動で颯天の舌を呑みこむように祐仁の舌がうごめいた。
舌だけでなく躰が吸いこまれそうな感覚に陶酔し、今度は颯天が呻いた。
痙攣する舌が祐仁の感覚を刺激してまた嘔吐く。
最初は苦しい嘔吐感も次第に快感に変わることを、颯天は身をもって知っている。
おそらくは祐仁もそうだ。
拒むなら、颯天の舌を咬み切ればいい。
けれど、そうはせず、祐仁の口は呆けたように緩く開いていく。
キスだけでふたりとも昇りつめるかもしれない。
それぞれに口の端から唾液をこぼしながら、甘美なキスを貪った。
襲っているのは颯天のほうなのにやめることはかなわず、快楽に引きこまれていく。
濡れたキス音のなか祐仁が激しく喘ぎ、颯天の舌に強く絡みついた。
後孔に当てた指先に力が入って、祐仁の体内に潜りこむ。
直後、祐仁は腰を浮かせてぶるっとふるわせると、オスの口から蜜を噴いた。
祐仁は完全に脱力して、されるがまま颯天の口の中で荒っぽく呼吸を繰り返す。
颯天はゆっくりと顔を上げた。
「すごいな、祐仁。キスで逝った」
「一端の、口を利く」
祐仁は荒い呼吸の合間に痞えながら責めるように云う。
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