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22.走破~無自覚の求愛~ ‐4
「祐仁、どうだ」
荒っぽい息が颯天のくちびるまで届いて、ふたりの呼吸が絡み、空気を熱く湿らせる。
「男娼の、くせに、やって、くれる」
だらしない姿を見せても祐仁はやはり祐仁だ。
颯天は可笑しそうに笑う。
「まだ終わってない。おれは祐仁に処女を捧げた。もう一つ、童貞も捧げる」
「颯天、もう……」
「無理じゃない。おれと一緒で底なしだって知ってる」
何度、精を放とうが反応するのは男娼としてのサガだ。
颯天は躰を起こすと、祐仁のぐったりした脚をつかんでさらに開いた。
自分のモノをつかんで祐仁の後孔に充てがう。
祐仁を責めている間、そのあられもない乱れた姿を見て颯天も快楽を感じていた。
支える必要もないほど硬く太くなり、先端から蜜を溢れさせてしとどに濡れている。
わざわざローションをつける必要もなく、自分の蜜をオスに塗し、そうして腰を押しつけた。
祐仁がメス側にも立てることはわかっている。
それでもなお――強引に襲っても痛めつけるつもりはなく――颯天は慎重にしたつもりが窄んだ入り口にオスを充てがったとたん、抵抗なく、それどころか指で弄ったときと同じくそこは自ら迎え入れるように開いた。
わずかに粘着音を立てながら先端が潜りこみ、さらに腰を進めると、ぬぷりと嫌らしいほど腸壁が絡みついてきて、くびれた突端を咥えこんだ。
その間、祐仁は呻き声を発していたが、それがつらさからくるものではなく、官能の響きであることはわかりきっている。
颯天はこれまで口の奉仕を何度も受けてきた。
はじめて味わう人の体内もまた熱を帯びて、颯天のオスを滾らせる。
何よりも、みっちりと纏わりつく腸壁の襞と、そして入り口の締めつけは口の奉仕では得られなかった快感だ。
颯天が逝くのも時間の問題で、訳ない。
祐仁を満足させられるまでに耐えられるか。
それとも一度放って、二度め果てるまでじっくりと味わうか。
颯天は自分に選択を迫る。
時間はゆっくりある。
そう思ったところで、いま何時だ、と時間をまったく無視していたことに気づく。
ベッドヘッドの棚に置かれたデジタル時計が目につき、それは八時をとうにすぎていた。
祐仁は一般的な休日平日は関係なく動く。
通常であれば、そろそろ出かける頃だろうが、颯天に襲われて以降、拒絶をするためにいちばん有効なはずの“仕事がある”という理由はひと言も発せられない。
それならやはり時間はある。
もしも有働が呼びにくるとしても、それはそれで祐仁を慌てさせるにはいいかもしれない。
もっとも、祐仁が慌てるとも思えないが。
だから、せめて祐仁を淫らに堕落させる。
快楽は嘘ではないはずだ。
快感を得られなければ果てに逝くことは不可能、それがメスになろうと男のサガだ。
颯天は埋もれさせた突端を引き抜いた。
すぐに、後孔に押し当ててくぷっと咥えさせる。
そしてまた引き抜く。
それを繰り返した。
オスの先は繊細な場所であり、後孔の入り口もまたそうだ。
排出の快感を知ったうえで、集中して刺激されればあっという間に躰がふるえるような感覚に侵される。
祐仁はいまそんな反応を見せている。
眉間にしわを寄せているのは、下唇を咬み嬌声を堪えているせいで、裏を返せばそれだけ感じているのだ。
祐仁のオスがまた勃ちあがりかけていることも快楽を享受している証しだ。
一方で、颯天もまた躰をふるふると痙攣させていた。
自分で自分を追いつめている。
“童貞”だった颯天にとっては、先端だけの交わりで充分すぎるほどの快感が得られている。
そこは腫れあがっているかのように熱を帯びて、血流が感じとれるほど敏感になった。
ふっ。
結んだくちびるのすき間から喘ぎ声が漏れる。
突きだした腰が自ずとぶるっとふるえ、颯天の限界は間近に迫っている。
「祐仁、おれのばんだっ」
颯天は祐仁の脇腹をつかみ、腰をぐっと突きだした。
祐仁の腸道を奥へ奥へと進む。
抉じ開けている感触は、そのまま腸壁が颯天のオスを摩撫するような刺激を繰りだす。
颯天はもうたまらなかった。
祐仁は背中をのけ反らせて逃れようとしたのかもしれないが、逆に颯天を迎え入れるしぐさになった。
ずんと中心を密着させた直後、祐仁が身ぶるいするのと同時に内部が収縮して颯天のオスを締めつけた。
放出の感覚が一気に先端へと駆けのぼる。
颯天は躰を密着させたまま腰を痙攣するようにふるわせた。
祐仁の体内に颯天のしるしを放った瞬間、颯天は思ってもいなかった満足感に溺れ、心身ともに打ちふるえた。
もう一度。
そんな欲求が煽られる。
颯天は荒げた呼吸ももとに戻らないうちに、腰を前後し始めた。
「颯天っ」
「祐仁、今度は一緒に逝きたい。そうしないと終わらない」
切望と、そして、脅迫を吐くと、祐仁は唸り声を放つ。
悔しさと観念した気持ちが交差している。
いや、それだけではきっとない。
最も祐仁が求めているものが何か、颯天の言葉を受けて様変わりしていくオスを見ていればわかる。
颯天のオスもまた瞬く間に太く硬さを取り戻し、深く密着したまま腰を小刻みに揺さぶれば、祐仁は胸を突きだすようにしながら喉をのけ反らせて喘いだ。
振動が刺激になったようで、祐仁のオスはますます欲望をあらわにした。
颯天は大きく腰を引く。
そして奥を目指せば、颯天が放った蜜のせいでもあるのか、淫らな粘着音が響いた。
颯天はわざとその音を立てるべく往復し、そのたびに祐仁はだんだんと吐息から喘ぎ声、そして嬌声へと変化させていった。
颯天はさらに腰を奥に突きつける。
そのとたん、ずぷっとそこに嵌まったような感触に陥った。
ぐ、あああああっ。
これ以上になく熱く濡れたような感覚に喘いだが、祐仁がそれ以上の嬌声を跳ねあげ、颯天の声は宙に紛れた。
ここが腸道のくびれ――最奥の快楽点だ。
颯天も祐仁に、そして永礼や清道にやられたことがある。
その感覚は植えつけられていて、祐仁を侵しながら颯天の体内も疼いてしまう。
腰を引けば、放さないといったように颯天に喰いついてくる。
その感触に身ぶるいしながら思いきり腰を引いた。
そこを抜ける瞬間、祐仁もまたがくがくと腰をふるわせて臀部を浮かせた。
勢い余ってずるりと腰が引け、颯天のオスが抜けだした。
息つく間もなくそれをまた後孔に充てがって押しつける。
祐仁は躰をよじり、颯天オスを締めつける。
躰を沈めながら、吸盤がいくつも纏わりついて激しい摩撫を受けているような陶酔を覚えた。
颯天は低く唸りながら、最奥へと進み、またすっぽりと嵌まる。
祐仁が激しく息苦しいように喘いだ。
快楽はその中心にも伝染し、触ってもいないのにまた充血して硬く勃ちあがった。
颯天はまた腰を引く。
ぐ、あっ。
くぅっ。
祐仁の咆哮を追うように颯天は呻いた。
今度は慎重に抜き、また嵌める。
短いストロークを繰り返し、最奥のキスはぬぷっぬぷっとした音から、ずぷっずぷっと嫌らしいまでのひどい音に変わっていく。
腸壁が分泌する粘液か、颯天の放った白濁液のせいか、それとも颯天が新たに蜜をこぼしているせいか。
祐仁のオスもまた止めどなく涎を垂らしている。
「も……無理、だっ……や、め、ろっ」
祐仁は息も絶え絶えに訴える。
その口からも涎がこぼれている。
理性を奪われ快楽に溺れている証しだ。
どれくらい往復しただろう、祐仁はコントロールのできない痙攣に襲われ、颯天もまた身ぶるいが止められない。
腸道のくびれは突くほどにやわらかくなって、自然と颯天の律動も速くなっていく。
ぞわぞわと粟立つような感覚が躰の中心から全身へと及んでいった。
腰もとには祐仁のオスが赤く太く脈打っている。
限界なのは明らかだ。気絶するほど淫れ快楽に堕落する祐仁が見たい。
颯天の加虐性が煽られ、いまにも果てそうな快感をその欲求でしのぎながら颯天は最奥に嵌まり、腰を小刻みに揺らした。
「ぐうっ……ぅわああっ……はや、てっ、逝、けっ」
制御できないままがくがくと腰を振りながらも祐仁は命令をする。
けれど、颯天を逝かせようとするのは、一緒に逝かなければ終わらないことをわかっているからであり、つまり祐仁が真に限界に達していることの証明でもあった。
颯天にしろ限界だった。
耐えられていることのほうが不思議で、すでに少しずつ漏らしているのではないかとも感じる。
「一緒、だぞ……祐仁」
息を切らしながら祐仁に呼びかけ、颯天は躰を前に倒していく。
祐仁の躰の脇に手をつけ、ほんの傍に顔を近づけるとともに、下腹部に祐仁のオスが触れて擦れる。
それも快感になり、たまらず祐仁は嬌声を跳ねあげた。
その目からはいつもの凛とした意思が欠け、のぼせたように颯天を見つめる。
颯天はその淫らさに誘惑され、祐仁の口の端に舌をつけて涎を拭う。
もっと深く。
颯天は片方ずつ祐仁の膝を腕に取った。
そうするだけでも祐仁は全身をふるわせている。
再び前かがみになって腰をぐいと突きあげた刹那。
下腹部では祐仁のオスが擦れ、体内では颯天のオスがずっぽりと快楽点に嵌まる。
一瞬後、ふたり同時に淫らに咆哮していた。
下腹部が熱く濡れ、そして体内が熱く溢れる。
荒い呼吸が混じり合い、合わせた瞳はどちらが潤んでいるのか、あるいはどちらも潤んでいて、焦点がうまく合わせられない。
跳ねるようだったふるえがおさまってくると、颯天は力尽き、どさりと祐仁の躰の上に落ちた。
合わせた鼓動は、どちらのものかわからないくらいせわしく、そして心地よさにうっとりとして颯天は身をゆだねた。
呼吸に合わせてだんだんと躰の浮き沈みが緩くなっていくなか、微睡 んで瞼を落としたとき――
「やってくれたな」
と、いきなり躰が括られた。
颯天の背中を括ったのは拘束していたはずの祐仁の腕であり、次には躰をひっくり返され、ふたりの立場は逆転した。
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