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第2話

新しい家族に初めて会ったのは中3の時。場所は今まで行ったことのないような高級レストランだった。顔合わせというやつだ。 「こっちへ来なさい(ひじり)」と普段出さない猫なで声で母親が言う。僕は仕立てられた慣れないスーツ姿で従った。 奥の個室に入った瞬間、目に入った三人の姿。 一人はオールバックの紳士な中年男性、あとの二人は僕と同い年か少し上くらいの少年。 少年の内の一人は黒髪で眼鏡の優しそうな顔立ち。見るからに頭が良さそうだ。 もう一人は派手な茶髪にピアス、そして着崩した礼服。見るからに軽そうだ。 中年男性は僕たちに気付くと「やあ」と穏やかに微笑んだ。前の父親だった人とは大違いの物腰だ。 「君が聖くんだね。初めまして、朝比奈淳治(あさひなじゅんじ)です。こちらは僕の愚息達だ。眼鏡が蒼真(そうま)、高校2年生。茶髪が(あかつき)で、高1だ。年子でね……仲良くしてやってくれるかい?」 中年男性ーー淳治さんは、低い僕の背に合わせて屈む。僕は反射的に一歩下がった。 優しそうだが、知らない人は怖い。みんな怖いけど、特に怖い。三人とも背が高いから迫力も倍増だ。動悸がしてじわりと手に汗が滲む。 「っ…!もう、聖どうしたの~緊張してるの?……ご挨拶なさい」 母親は僕の態度に焦ったように僕の肩を掴む。その力の強さに彼女の怒りを感じた。母親には殴られたことはないけど、殴られそうだった。 僕は緊張で目の前がクラクラしながらも「はい……宜しくお願いします」と素直に頭を下げたのだった。

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