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第5話
「キミの食べてる姿が一生懸命で、とても可愛くて。じろじろ見てごめんね。不愉快だったよね」
僕はポカンとする。
えっと、……え?この人……え?
麻痺した脳でじわじわと意味を理解した僕は「ち、がっ」と背筋を勢いよく伸ばした。
蒼真さんが「え?」と僕を見る。つい声を上げてしまった僕は後悔した。「あ、えと、その」とアワアワしてしまう。カーッと顔が熱くなった。
「……うん、どうしたの?」
しかし蒼真さんは挙動不審な僕をなじるでもからかうでもなく、落ち着いた声音で続きを促してくれた。保育士さんみたいだ、と思った所でズンと落ち込む。それなら僕は幼児か……。
なんてへこんでる場合じゃない。ちゃんと弁明しなきゃ。なんかよく分かんないけど、一人になりたいけど、とりあえず蒼真さんはとんでもない誤解をしている。
がんばれ、がんばれ僕。僕は湿ったハンカチを握りしめて、息を吸って、口を開いた。
いやーー開こうと、した。
ダンッ
「ひっ!」
突然トイレの入り口のドアが揺れ、僕は飛び上がるくらい驚く。
蒼真さんの肩越しに、いつの間にか暁さんの姿があった。殴ったらしい右拳をドアに預けたまま不機嫌そうに僕たちを睨んでいる。な、何なのこの兄弟……。
「暁」と後方を振り返った蒼真さんが呟くと、暁さんは舌打ちをした。
「男同士で見つめ合ってんじゃねぇよ……キメェなお前ら」
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