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第7話

高校に合格した春休み、母親はめでたく再婚した。そして僕も自動的に淳治さん宅に引っ越す事になった。 淳治さんは、ある会社の専務らしい。家も大きくて立派な一戸建てだった。 僕はその家の前に立って気圧される。本当に上手いことやったよな、と隣に立つ母親をチラ見した。勝ち組の母親は堂々とした表情をしている。女は本当に逞しい。 「綾!聖くん!」 綾とは僕の母親の名前だ。淳治さんがドアを開け笑顔で僕らを出迎える。玄関も広くて綺麗だ。 「淳治さん、今日から息子共々よろしくお願いします」 母親が殊勝に頭を下げ、慌てて僕も倣った。「よしてくれ」と淳治さんは苦笑する。 「僕たちはもう家族なんだから。ここは君たちの家だよ」 「ありがとう」 淳治さんと母親がそう会話を交わしている合間を縫って、「聖くん」と僕は声を掛けられる。 ぎくりとした。顔を向けなくても誰だか分かる。この声は……蒼真さんだ。一気に体が強張る。 何故か僕に構ってくるこの人は苦手だ。いや蒼真さんに限った事じゃないけど。先日のレストランの件は申し訳ないばかりだけど。人嫌いの僕にとっては甚大なストレスだ。 だけどーー対処法はあった。

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