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第14話
恥ずかしい。
もう、これに尽きる。吐いてる所は見られるし寝顔も見られるし泣いてるとこまで。
でも蒼真さんはどこまでも優しくて、泣き晴らした目を冷やしてくれた。僕は大人しく冷やされながら訊いてみる。怖さは、だいぶ薄れていた。
「あの……蒼真さんは、僕を殴らないんですか……?」
僕の言葉に蒼真さんは「えっ!?」と仰天した。あれ……変なこと……言ったかな……。
「殴ったりなんかしないよ。どうして?」
「や、えと……前のお父さんが……いつも僕を殴ったり蹴ったりしてたから……」
思いっきり泣いたからかな。僕はロボットモードでもないのに、それほど突っ掛からずに喋れた。心が落ち着いてる。
「聖くん……」
蒼真さんは悲痛な表情になって、冷やしていたタオルを傍らに置くと僕を抱きしめた。
びくっと僕の全身が跳ねる。「怖がらないで」と蒼真さんが苦しそうな声音で言った。僕はハッとする。
蒼真さん……泣きそう……?どうして……?
「大丈夫だよ、聖くん。僕は絶対に君を殴ったりしない」
蒼真さんは苦しげながらも、きっぱりとそう言った。僕は泣きすぎてぼんやりした頭で聞いていた。
殴らない……?この人は……蒼真さんは、殴らない……
蒼真さんは僕を離すと、真っ直ぐに見つめてくる。少し潤んだその目に強い意志を感じた。
「僕の事……すぐには信じられないかもしれない。だけど、これだけは信じて。僕は君を大切にする」
日本語がまたおかしい気がしたけど、僕は再び泣きそうになった。慌てて俯く。
胸の当たりから渦を巻いた何かが込み上げてくる。それが何なのか分からないけど「はい……っ」と僕は頷いた。
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