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第16話
「こんばんは、先日はすみませんでした。今日から引っ越してきました、宜しくお願いします」
実は日付けが変わっていたから厳密には今日ではなかったけど、僕はそんな事はどうでも良かった。
とにかくこの場を遣り過ごす。これが一番重要だった。幸いにも暁さんにもロボットモードは通用した。
水を飲むのも忘れて僕は「おやすみなさい……っ」と暁さんの横を通り過ぎようとする。
ところが。
ダンッ
「っ……!」
壁際を通ろうとした僕の眼前で暁さんの拳が壁を叩いた。ゆっくりと上から影が落ちてきて僕は硬直する。
「なんだお前?こないだと随分違うな」
暁さんが目の前に立ちはだかり僕を見下ろした。僕の喉がひくりと痙攣する。「あ、の……」と辛うじて口を動かした。距離を取りたかったけど足が縫い付けられたように固まってる。
『あー腹立つ。お前ちょっとこっち来い』
その刹那、過去の声が僕の頭の中に甦り戦慄した。
前の父親は、僕を壁際に押し付けると思いっきり腹や顔を殴った。僕が気絶するまで、何度も、何度も。
「あ……」
僕の手が震える。体温が一気に冷えていく。冷や汗がこめかみを伝う。「なんだよ?」と眉をひそめる暁さんの顔が、前の父親と重なる。
ロボットの、鎧が。
「や、いや……」
剥がれて、いく。
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