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第19話
「…とにかく暁、聖くんから離れろ」
僕が謝るべきか迷っていると蒼真さんが低い声で言った。無理に冷静になろうとしているような声だった。
そう、僕と暁さんは未だ至近距離にいたのだ。僕も離れようとソロッと後退しようとした時、ぐいっと右肩を掴まれ引き寄せられる。トンと暁さんの肩に寄り掛かる形になった。混乱の極みに陥る僕の横で「や、だ」と暁さんは舌を出す。
その挑発に、蒼真さんはキレた。「離れろ!」と暁さんを僕から引き剥がす。
それに暁さんも「何だ?テメェ……」と青筋を立てた。二人は僕の前で睨み合う。
け、ケンカ?ど、どうしよう……
僕は相変わらず混乱したまま右往左往する。淳治さんが起きてきてくれないかと思ったが、夫婦の寝室はこの家の一番奥らしい。僕が呼びに行かない限り気付かないだろう。
「……おい聖」
僕がオロオロしていると、暁さんが静かに僕の名前を呼ぶ。まともに呼ばれたのは初めてで「は、っはい」と声が裏返ってしまった。
いっそ笑って欲しかったが二人はにこりともせず睨み合ったまま。その状態のまま、暁さんは続ける。
「テメェは……どっちを選ぶ?」
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