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第3話
「ヤな夢…。僕は、僕なのに」
心のどこかで、もう一人の僕が憎いと叫んでいる。僕だって弟のようになりたかったと言っている。けれど僕は誰よりも自分がよくわかっていた。それはできないことだと。このベータという性別が僕を示すものだということを僕は理解していた。何かをねだるのは、ないものねだり、だということも僕はわかっていた。
「なんだか眠れないし、もうゲームでもしようかな」
僕は孤独から逃げるために二次元と本の世界へと逃げた。僕が唯一、心休める世界だったから。どうせ明日は休みだし、ちょっと服でも買いに行こうかなって計画しかないし。寝坊したって誰も怒りはしない。
「そういえば、明日はワイシャツ買わないといけないんだった」
すぐに忘れてしまう僕は、それを防ぐためにローテーブルにメモを常備してある。そこへワイシャツを三枚、と書き記し、ほかにも必要なものを書く。
「あ、そろそろ靴も買い替えようと思ってたんだ」
仕事でよく靴をダメにしてしまう。あまり汚い靴やくたびれたワイシャツはお客様を不愉快にさせるから、と身だしなみには注意するように僕の職場は徹底されている。そうやって徹底的にルールを守ることで店自体に統率感を出す。
「よし、そろそろゲームしよっ」
メモをわかりやすい場所に貼り付け、充電器にさしっぱなしだったスマホを手に取る。最近イベントの終了したばかりのアプリのアイコンを押して起動する。それは正直、女性向けなんだけど数少ないながらも男性ユーザーもいる育成ゲームである。僕が職場で担当しているジャンルがゲームや少年コミック、ラノベになるため、最近人気だというそのゲームに手を出した結果、見事にはまってしまったというわけだ。
固まってしまった身体をほぐそうと肩を動かせば、パキリと音がする。気が付けばもう日が昇り始めていた。僕はそこまで早起きではない。むしろいつも遅くに起きるほうで、出勤時間が遅いことも相まってか、基本的には昼前に起きている。だけど、今日はお休みを利用して買い物に行くから早めに起床する。それに大好きなアニメグッズとかも見たいから、早めに行くに限るよね。都内に住んでいるからどこに行くにも電車だけど、電車で一駅か二駅乗ればすぐにたくさんお店がある場所に出られる。男性用ワイシャツが売っているお店もアニメグッズのお店も、場所は違えど電車で移動できる範囲。気にするほど遠いわけじゃないし、趣味だから移動も多少遠くても苦じゃない。
「さぁて、ワイシャツは三枚。あと、この特典付きの小説とCDを買って…。買い物も、行っておこうかな」
メモに書き足して買うものと、必要なものを整理していく。服はブラック系のオーバーサイズのチェックシャツにホワイトベージュのズボン、黒のスニーカー。ちょっと袖が余るくらいの大きめの服装が好きな僕は、職場ではきっちりしているけれど、私服は上のシャツは基本ダボついている。そんないつもの服装にワンショルダーバッグをかけ、その中に財布やスマホ、買い物袋とメモを入れる。
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