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第12話

「お客様、大変似合ってます!!」 「店員さん、これと、あとこの色もお願いします」 気が付けば、高科さんと店員さんに着せ替え人形にされていた僕は、ありとあらゆる服を着せられた。シンプルなものから、落ち着いたカラー、パステルカラーなど、本当にいろいろ。統一性がないかのように思われるそれらだけど、唯一同じものがある。それは、上の服はどれもゆったりとしていて、オーバーサイズなことだ。 「うん、やっぱりよく似合ってるよ」 「ほ、本当ですか……?」 「もちろんだよ。どの色も服も、凛にぴったりだ」 「あ、ありがとうございます……」  純粋な誉め言葉をもらって、とても嬉しくなる。僕は双子なのに弟の優とは違って身体が小さい。おそらく優はアルファだから身体が僕より大きいのだろうと、その時は思っていた。けど、たぶん僕がベータとオメガの混じり者だったからなのかもしれないと、今なら思える。 「店員さん、カード一括で、ここの分買います」 「ありがとうございます!! すぐにご準備いたします!!」 「え!? た、ま、雅人さん!?」  驚くことに、クレジットカードを出したと思ったら、高科さんは出してもらっていた服をすべて購入してしまった。さすがにびっくりしすぎて、声が出ない。 「ひ、秘書さん……、じゃ、ない……?」 「え、秘書? 凛は俺のことを秘書だと思ってたの?」  ショップで服を包んでもらっている間に、思っていたことが口に出ていたらしい。雅人さんに秘書だと思っていたことがバレてしまった。 「俺は、とある会社の社長をしているんだ。ま、しがない社畜だね」 「しゃ、社畜……。お忙しいんですね……、なんだかすみません……。失礼なことを……」 「謝らなくてもいいんだ、俺も言ってなかったから。あ、できたみたいだよ」 「本当だ……」 優しそうな笑顔で社長をしていると教えてくれた雅人さん。いつも仕立ての良いスーツを着ていたから勝手に秘書だと思っていたけれど、まさか社長さんだったとは。失礼なことを考えてしまったと反省する。気まずくなりかけたタイミングで呼ばれたので、よかったと思いながら店員さんからショップバッグを受け取る。そのあとは、雅人さんおすすめだというお店に行くことになった。 「え、ここって……」 「うん、アクセサリーショップだね」 「なにか、買われるんですか?」 「ちょっと、これはどうかなって思ったんだけど……、君と同じ時を歩いていきたい。だから時計を見たいんだ」 「と、時計……」 「さすがに、引いた……かな……」 「い、いえ!! 違うんです、その、う、嬉しくて……」 いきなりで、少し驚きはしたものの、そうやって同じ時を歩きたいと言ってくれる人がいる幸せを、贅沢を僕はよく知っている。

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