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第18話

「凛、俺は怒っているんだよ」 「まさとさっ」  ところ変わって雅人さんの住まう部屋。僕は雅人さんにソファへ放り投げるように座らされた。強い怒気を纏っていることがよくわかる雅人さんだけれど、僕はどうすればいいのかわからない。 「なんで、何も言わなかった」 いつもの優しい雅人さんじゃない。この人は、僕を喰らうアルファだ。 「大丈夫だと、思ったのか」 疑問符さえもつかない、詰問。僕は胸の内を明かせなかった。たしかに、怪しいとは思っていた。おかしい、嫌な予感がする、その予感を自身が感じているとわかっていて、あえて雅人さんには伝えなかった。 「凛、だんまりではなにも解決しない」 「ぼく、は……」 「凛、たしかに俺は怒っている。だけど、凛の言葉を先に聞きたい」  少しだけ、最初の怒気より収まった今。雅人さんはさっきよりも優しい口調で僕に問いかけた。その言葉に、もう僕の涙腺は耐えられなかった。 「大丈夫じゃないと、わかっていました」 ほろり、ほろり、と涙が勝手に零れ落ちていく。わかっていた、僕が無事であるという保障がないことは。もう僕は雅人さんの側にはいられないかもしれないこともわかっていた。それでも、希望は失いたくなかった。僕の家族はきっといつか僕を見てくれると信じていた。  いつか、僕を許してくれると、そう思っていた。僕が家族の一員として認めてもらえるかもしれないと信じていたのに。それは儚くも散り、希望は押しつぶされた。 「信じたかったんです、僕はあなたたちの家族だって。でもやっぱり僕は家族じゃなかった。あの人たちにとって、家族は優だけなんです。そこに僕は入っていない」 それが、わかっただけでも、よかったような気がする。そうでなければ、いつまでも僕はあの人たちに縛られていたから。あの人たちが、いつかは僕のことも家族の一員だと言ってくれる日が来ると思っていたけど。 「でも、やっぱりそんな日は来なかった」 いつか、きっと、そんな希望はもう持たない。なぜなら僕は彼らに家族ではないことを証明されてしまったから。 「凛……」 「いい機会でした。僕が家族じゃないと知る。でも、こんなことになるとは、思ってなくて……」 「…………」 僕が、オメガだと知ったらきっと家族は僕を売るだろう。いや、それとも僕を家族として受け入れるのか。それはもうわからないけれど。 「凛、君は家族を捨てる覚悟が、できたんだな」 「はい、僕を捨てた家族に、いつまでも縋るつもりはありません」 「わかった。それなら今から言うのは君の危機管理のことだ」

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