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番外編 1-3

 (すぐる)も僕も、両親にとってはただの道具なんだって知った。優は両親に愛されてずるいとずっと思っていたけど、あれは仮初の愛なのだと今更言われてしまうと、それはそれでキツイものがある。今まであれだけ愛してくれたのに、それが全部嘘だった、なんて言われたら僕は立ち直れないだろう。 「優も、苦しいんだね……」 優と電話を終えてもなお、痛む胸。悲しい気持ちが溢れてくるし、それと同時に怒りだってある。さっき伝わってきたものとは違う、自分自身の気持ちから起こる許せないという思い。優の受けた傷を僕が仕返ししたいという気持ち。 「ああ、僕は本当の意味で、ちゃんと優を愛していたんだね……」  最初、もしかしたら僕は優を憎んでいるんじゃないかと思っていた。本当の意味で優の事なんて愛していないんじゃないかって、ずっと考えていた。許せない、僕より愛されてずるい、そういった感情が渦巻く中で接していたから。僕も、優のことを偽物の感情で愛していたんじゃないか、愛という名前を付けた憎しみから接していたんじゃないか、そうやって悩んでいた。 「よかった、僕の唯一の半身を傷つけなくて」 だけど、本当によかったと思う。僕たちは血を分け合って生まれた双子だ。僕は優に複雑な感情を抱いていたけど、それでも互いに補い合って生きてきた。優がいじめられた時は僕が庇ったし、そのまた逆もしかり。僕がいじめられた時、優は僕の前に立って守ってくれた。僕は、その時も優の怒りを感じ取っていた。 そう僕たちはやっぱり互いを思いあう家族。バース性に囚われない、双子の愛。そこには両親さえも入る隙間がない、僕たちだけの愛。 「僕が、優を傷つけるようなことを、しちゃいけない。だって、僕たちはたった二人だけの家族なのだから」 たしかに、優に対して正直に伝えられない思いを持ったこともある。それは事実だし、責められても何も言えない。だけど、それでも僕たちは家族として互いに思いあっている。 「でも、きっとそうやって思えるようになったのは、雅人さんのおかげかな……」 気持ちの余裕ができたのは、間違いなく雅人さんのおかげ。僕は雅人さんに感謝もしないといけない。雅人さんのおかげで僕たちの絆は壊れずに済んだ。 「あれ? そういえば……、優はあの人たちに反抗したって言ったよね?」  そこで、ふと、優の言っていた言葉を思い出した。あの人たちは自分の思い通りにならない駒は切り捨てるタイプだ。それを僕は身をもって実感した。だから僕とあの人たちは家族じゃなくなったし、ただ血のつながりがあるだけの他人となった。 「まさか!!」 嫌な予感が頭をよぎる。あの人たちは、言わば子どものような人たちだ。それも(たち)の悪い、自分が悪いと分かっていないタイプの。平気で人を傷つけることができる人たち。 「優を、傷つけるだけじゃない……」 きっと、優にとって不利になる状況に追い込むはずだ。

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