24 / 27
番外編 1-5
しかし、優にしたことを悔やんでいる場合ではない。優を助けるために動かないと手遅れになるかもしれない。
『もしもし!! 凛!?』
「優!!」
『凛の推測通りだった!! あいつら大学に払った学費とか後援費を返せって怒鳴り込んできたみたい!! それから、あんまり考えたくなかった事実だけど……、玲にも手を出そうとしたみたい。俺、玲に手を出されるのだけは許せない』
玲 、きっとその子が優の思い人なのだろう。そして両親は優の逆鱗に触れてしまった。
『俺、悔しい……。何にも力がない』
「優、僕の弟はそんな弱音を吐くような子じゃない。優は優の夢があって今を頑張っていたんでしょう?」
『うん……、でも俺は……』
本当は医者なんて目指したくない、初めて優の本音を聞いた。ずっと優は両親の後を継ぐのだとばかり思っていたけれど、それはただの僕たちの押し付けだったようだ。
『俺、本当はやりたいこといっぱいあるのに!! 放課後だって遊びたかった!! 自分の行きたい大学に行きたかった!! 俺は、本当は医者にはなりたくない!!』
優の、怒り。心の底からの叫びだ。
「優、でも今は力がないんでしょう? だったら、優に今できることを考えてごらん。そうしたら、優のやるべきことは見えてくるはずだよ」
僕は、優を落ち着かせるように声をかけた。すると電話の相手が変わった。
『初めまして、俺は玲です。お兄さんの凛さんですか?』
「初めまして、玲さん。僕が兄の凛です」
『すみません、突然。ちょっと優が電話をできる状態じゃないので、俺が代わりに……』
玲さんと僕とで、今まで起こったことを整理し、玲さんの身に起こったことも教えてもらった。幸いにも玲さんのご両親はあの人たちの圧力に抵抗していたようで、玲さんの身を勝手にどこの馬の骨とも知れぬアルファに渡すようなことはしなかった。本当に、自分の両親なのに反吐が出るような存在だと、改めて思う。
「わかりました、玲さん。優のことをお願いします、優の足りない心の隙間を埋めてあげられるのは、玲さんしかいませんから」
『ありがとう、ございます……』
玲さんとの話が終わり、僕はまたメッセージを雅人さんに打ち込んだ。結局、そんなことをしていたら夕方になっていた。
「凛、ただいま」
「おかえりなさい、雅人さん」
「聞きたいことがあるから、ご飯を急いで食べてもいいかい?」
「はい、用意はできてます」
急いで帰ってきたであろう雅人さんと夕食を食べて、僕は昼間にあったことをすべて、詳しく伝えた。さすがにメッセージでは詳細を記せなかったので、その補完だ。
「わかった。優君と玲君、玲君のご家族をこちらで正式に保護しよう」
「いいん、ですか……?」
「当たり前だよ、優君は君の大切な半身。半身の優君の大切な人は俺たちの大切な家族に変わりはない。言っただろ? 家族の形は決まっていないって」
「ありがとうございますっ!!」
それからの、雅人さんの手腕はすごかった。あっという間に知り合いの弁護士に連絡を取ると、後日話し合いの機会を設けるということまで決めてしまった。
ともだちにシェアしよう!