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番外編 1-6

 相変わらず、そういったトラブルへの対処が早いと、しみじみ思う。雅人さんがそれだけ優秀なのだということも感じる。僕のアルファはカッコいい。 「全員が休みなのはこの日だね。俺も休みを取ったから、一緒にやるよ」 「ありがとうございます……。こんなゴタゴタに巻き込んでしまって、正直恥ずかしいです。自分の家族の尻拭いをさせてしまうなんて……」 「凛、これは受け売りなんだけどね。親が子を背負うことはあっても、子が親を背負ってはいけないって俺は教えてもらったんだ。その時は、俺には意味がよくわからなかったけど、大人になった今ならわかる」 親にとって、子はいつまでも子で、その逆もまたしかり。子にとって親はいつまでも親だ。ということはたしかに、その人が言った通り、親が子を背負うことはあっても、子が親を背負うことはない、ということ。雅人さんはそう言った。それを聞いてハッとした。今まで考えたこともなかったことだ。いつかは介護して、なんて思っていたけど、それは漠然としすぎていた。 「俺たちがね、自分の両親のしたことの尻拭いをする必要はないんだ。もちろん、例外はあるよ。だけど、今回のケースは例外には入らない」 人生経験は俺が逆立ちしたって、親のほうが上だから、と言ってくれる雅人さんに少し気持ちが楽になる。それと同時にそれを言ってくれた人は誰だろうと思う。 「さぁ、話し合いの前に俺も優君とその、玲君だったかな、その子にも会いたいから、まずはそっちの日取りを調整しよう」 「はいっ」  ほんの少しだけ、悲しそうな、どこか遠くを見つめた雅人さん。きっといつか、教えてくれる日が来るだろう。僕からは何も聞かないようにした。それからは、優とも連絡を取り合い、話し合いの前の顔合わせの日取りを決めた。 『凛……、ごめんね』 「優、そこはありがとう、がいい」 『うん、ありがとう。俺、本当に力がないって実感した。だから、強くなるよ。誰にも負けないくらい、俺が玲を守れるように』 「そうだね、僕も、みんなの力になれるように頑張る。お互い頑張ろうね」 『もちろん!!』 電話をしばらくして終え、雅人さんに向き合う。本当にお世話になります、と言えば雅人さんは気にしてないと言ってくれた。 「凛、一応また優君にも確認をするけど、凛にも聞くね。君の書類上の縁は切れているご両親が、どうなってもいい? 例えば警察に捕まるとか、そういったことになってもいい?」 「本当は、ここで嫌だというべきなのでしょうね……。でも僕は、気にしません。振り返らないことにしました。僕は、あの人たちのことを、思ったよりもずっと憎んでいたようです」 「わかった、君の意志は確認した。でもまた今度、もう一度確認させてもらうね」 「はい」  雅人さんに、両親がどうなってもいいかと聞かれて、一瞬だけ迷いが生じた。だけど、その迷いはただ世間体を気にする迷いで、両親に対する迷いなど一ミリもなかった。僕は、思ったよりも薄情なのだと知った。

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