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第5話
その話が終わると、丁度あと三十分で十二時になる頃だった。
「ユキ、何食べたい?今から食べに行くぞ」
「え、えっと……命は?」
若に誘われ、ちらっと俺を見る。
首を横に振ると不満そうな表情をした。どうやら俺と離れるのは嫌らしい。
「ユーキ、だから、命に甘えすぎ。」
「甘えすぎ……?」
「そう。別に長い間命と離れるわけじゃないし、離れてる間は俺も陽和も赤石もいるよ。世那にもついてきてもらうから、寂しくないだろ?」
俺としては甘えられたり頼られたりすると嬉しいんだけど、若はユキに成長してもらいたいらしい。
確かに、こんな危うい世界で生きているんだ。いつ俺が居なくなっても一人で生きていけるようにはしないといけないんだと思う。
「う、うん。寂しく……ない……」
ユキの手が俺の手を掴み「やっぱりやだ」と言って離れなくなる。
「ユキ?」
「やだ。命と離れるの、やだ。何で?一緒にいちゃダメ?甘えるの、ダメなの?」
昔のような話し方に戻ってしまっている。
座っているユキと同じ目線になるように膝を床についてユキの手を握る。
「ユキ。ちゃんと話して。そうじゃないとユキの本当に言いたいことがわからない。」
「あ……ぅ……」
「ゆっくりでいいから、最後までちゃんと聞いてるから、ちゃんと教えて。」
頭を撫でると、ユキは目に涙を貯めて頷く。
「命と離れるのが怖いから嫌だ。ハル君達がいて寂しくはないけど、怖い。」
「わかった。」
立ち上がり、若に向かって頭を下げる。
「すみません。今日は……」
そう言うと若は首を横に振る。
「わかったわかった。俺も突然言いすぎたし、悪かったなユキ。」
「……違うの。ごめんなさい、あの……俺……」
ユキが吃りながら言葉を紡いでいると、赤石がユキの隣に座った。
「ユキ君、大丈夫。誰も怒ってないし、落ち込んでもないよ。違う案を探せばいいんだよ。例えば……ほら、今からみっちゃんの家に行ってご飯を作ってもらうとか。」
赤石が俺を見てニコニコ笑う。
いや、俺これでも仕事中だし。そう思っていると早河に肩を叩かれる。
「いい。帰ってやれ。ユキ君の体調が優先だ。今日は特に忙しくないし、お前の分はやっておく。──いいですよね、若。」
「ああ」
大きくはなったけれど、まだ俺から離れたくはないらしい。
これは依存しているということなのだろうか。
「じゃあ今からみっちゃんの家ね!よーし、若も陽和君も出掛ける準備して!」
赤石の明るい声にハッとして、まだ少し不安そうにしているユキの頭を撫でた。
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