8 / 17

第8話 ユキside

いつもの大きなベッド。そこに二人でゴロンと寝転ぶ。 「命」 「ん?」 擦り寄ると髪を撫でられて、心地良さに眠たくなってきちゃった。 「ハル君が言ってたの。俺、一人で頑張った方がいい……?」 「……ユキがやりたいと思うなら頑張ってほしい。外に出たいとは思わない?」 「命となら思うよ。でも、一人だとちょっと怖い。」 「何が怖い?」 すぐ傍にいるから、トクトクと命の心臓の音が聞こえてくる。 怖い。 一人は嫌い。 昔よりはずっとマシになったけれど、誰かに悪意を向けられたらと思うと、ゾッとする。 「ユキ?」 「……わからない。何か悪いことされたらって思うと怖くなる。」 「俺と暮らしてから、一人でいた時に悪いことされた?」 「……ううん」 でも、想像すると怖い。 命の胸に顔を埋める。 「命は、俺に一人で出掛けられるようにしてほしい……?」 「そうなってほしいとは思うけど、無理はしなくていい。」 命は優しいから、いつも無理はしなくていいって言う。その時いつも思うんだ。俺ももっと頑張れたらって。 「頑張るよ」 「うん」 抱きついて、首にキスすると「そこじゃないと思うんだけど?」とくすくす笑いながら言われ、俺も笑いながら顔を上げて唇に噛み付く。 「大好き」 「俺も大好き」 俺も新しい一歩を踏み出さないと。 少しだけ昼寝をして、まだ眠っている命を起こさないようにリビングに行き、明日からの計画を立てる。 まずは、一人でおつかいに行けるようにしよう。 それからご飯も作れるようになりたい。 お仕事から帰ってくる命に夜ご飯を用意したよって伝えたら、多分すごく喜んでくれる。 紙に明日作りたい料理を書いていると「ユキー……」と声が聞こえてきた。慌てて寝室に行けば、命が手をヒラヒラさせて俺を呼んでいる。 「なあに?」 「トイレ行ってたのか?」 「ううん。リビングで明日のこと考えてたの」 「明日……。出かけるの?」 「うん。俺ね、頑張るの。」 それでもっと、もっともっと命に好きになってもらうんだ。

ともだちにシェアしよう!