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第8話 ユキside
いつもの大きなベッド。そこに二人でゴロンと寝転ぶ。
「命」
「ん?」
擦り寄ると髪を撫でられて、心地良さに眠たくなってきちゃった。
「ハル君が言ってたの。俺、一人で頑張った方がいい……?」
「……ユキがやりたいと思うなら頑張ってほしい。外に出たいとは思わない?」
「命となら思うよ。でも、一人だとちょっと怖い。」
「何が怖い?」
すぐ傍にいるから、トクトクと命の心臓の音が聞こえてくる。
怖い。
一人は嫌い。
昔よりはずっとマシになったけれど、誰かに悪意を向けられたらと思うと、ゾッとする。
「ユキ?」
「……わからない。何か悪いことされたらって思うと怖くなる。」
「俺と暮らしてから、一人でいた時に悪いことされた?」
「……ううん」
でも、想像すると怖い。
命の胸に顔を埋める。
「命は、俺に一人で出掛けられるようにしてほしい……?」
「そうなってほしいとは思うけど、無理はしなくていい。」
命は優しいから、いつも無理はしなくていいって言う。その時いつも思うんだ。俺ももっと頑張れたらって。
「頑張るよ」
「うん」
抱きついて、首にキスすると「そこじゃないと思うんだけど?」とくすくす笑いながら言われ、俺も笑いながら顔を上げて唇に噛み付く。
「大好き」
「俺も大好き」
俺も新しい一歩を踏み出さないと。
少しだけ昼寝をして、まだ眠っている命を起こさないようにリビングに行き、明日からの計画を立てる。
まずは、一人でおつかいに行けるようにしよう。
それからご飯も作れるようになりたい。
お仕事から帰ってくる命に夜ご飯を用意したよって伝えたら、多分すごく喜んでくれる。
紙に明日作りたい料理を書いていると「ユキー……」と声が聞こえてきた。慌てて寝室に行けば、命が手をヒラヒラさせて俺を呼んでいる。
「なあに?」
「トイレ行ってたのか?」
「ううん。リビングで明日のこと考えてたの」
「明日……。出かけるの?」
「うん。俺ね、頑張るの。」
それでもっと、もっともっと命に好きになってもらうんだ。
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