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第9話

*** い、いよいよこの時がきてしまった。 命が買ってくれたボディバッグに財布とスマートフォンをいれて玄関に立つ。 「シロくん、行ってくるね。」 足元にいるシロくんの頭を撫でて、外に出る。 鍵を閉め、俯いていた顔を上げた。 意を決してエレベーターのボタンを押し、マンションの一階まで降りる。 何度も命と歩いた道を今日は一人で歩くけれど、上げていたはずの顔はいつの間にか地面を見ていて、やっぱり怖いな……と思う。 見慣れたスーパーに着いて、カゴを持ち、スマートフォンを取り出してメモを確認する。 今日作るのはハンバーグ。 今朝見たレシピに載っていた材料を入れて、それから食べたいなと思ったモンブランを二つ手に取った。 命、これ食べれるかな。 ……食べれなかったら、俺が二個食べたらいいか。 モンブランもカゴの中に入れて、お会計に行く。 色んな人にチラチラと顔を見られて恥ずかしい。外に出るといつもこうだ。 お金を払い、袋に買った物を急いで詰めて、家に足を向ける。 買い忘れた物は無いよね? 他に要る物も無いよね? 不安な気持ちのまま家に着いて手を洗い、買ってきた物をキッチンに広げる。 「……大丈夫」 ちゃんと全部ある。 ご飯を作るにはまだまだ早い時間。 材料は一度冷蔵庫に入れて、部屋の掃除をすることにした。 寝室のシーツを剥ぎ取って洗濯機に入れ回す。その間に掃除機を掛けて、少し休憩した後洗濯の終わったシーツを外に干す。 今日はいい天気だから布団も一緒に天日干しして、部屋に戻ってググッと伸びをした。 掃除機が嫌で隠れていたシロくんが足元に寄ってくる。 そういえばもう少しでお昼だ。 今日のお昼ご飯は何だろう。 キッチンに行ってラップの掛けられているお皿を見ると、唐揚げがあって嬉しくなった。 最近は家で食べることが多いから、お昼ご飯はお弁当箱じゃなくてこうしてお皿に盛り付けられてある。 昔と変わらず、ほとんど毎日こうしてご飯を用意してくれている命。 甘えすぎて、いつかバチが当たるんじゃないかとすら思い始めてきた。

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