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第13話

三人は落ち着きを取り戻したところで、今後の対策を話し合った。 「とりあえず怪我ももう治ってきたし、今の仕事を辞めて転職しようと思ってるの」 香名が静かに切り出す。 「そっか… やっぱり会社だと嫌でも顔合わせちゃうもんね。それに何かあってもいけないから」 「うん。それでね、ついでに引っ越しもしちゃおうかと思って」 「あぁ…」 あの男はもともとここに出入りしている。 当然だろう。 「そんなに遠くに行くつもりはないけどね」 笑いながら話す彼女の姿を見て、灯唯はすこし寂しさを感じていた。 もちろん恋愛とは別の感情になるが、香名は灯唯にはなくてはならない人になっていたから。 距離が出来ることで彼女が離れていくような気がしているのかもしれない。 しかし香名が心機一転し、新しい環境に身を置くのはとても大事なことだろう。 当然しばらく不安は付きまとうかもしれないが、生活基盤が変わればきっと良い方向に変わるだろうとも思えた。 灯唯は何も言えず、ただ彼女のこれからの平安を祈る事しかできないのである。 「あ、そういえば環慈話あるって言ってたよな」 香名のお礼がわりの手料理をたっぷりご馳走になって帰るその道中。 環慈も用があって灯唯の所に来たのに、結局聞かずじまいだったことを謝った。 「ごめんな後回しになって。何だった?」 「……うーん、また改めてでいいや」 「何だよ、気になるって。言えよ」 「えっと…そんじゃあ……、あっ、明後日話す!」 「何ソレ」 日にち指定の根拠が分からす思わず笑ってしまう。 今すぐにでも知りたいんだけどな、と思ったが口には出さずにグッと飲み込んだ。 どうでもいいこととは決して思っていなかったものの、後回しにしてしまった罪悪感から無理強いは躊躇われた。 「明後日ならトモのバイト無いだろ?また改めてお前ん家行くわ」 「ん、分かった」 結局二人はそのまま別れ互いの家路につくこととなった。 その晩、灯唯の就寝直前に香名からメッセージが届いた。 明日仕事を辞めるため会社に話をしに行くらしい。 その後バイト先に寄るとのことだ。 一方環慈は指定した日にちまでは我慢すると言っていた。 変な所で律義な奴だなと灯唯の顔が緩む。。 「早く会いたいんだっつーの…」 独り呟いて、やけに恥ずかしくなった。 翌日、香名は予告通りバイト先にやってきた。 「上司にもう事情を全部話して退職願も出してきちゃったよ」 「早ッ!全部話したの?」 そんなオープンな辞め方をするとは思わなかったので灯唯は驚きを隠せない。 しかし当の本人はスッキリした顔をしている。 「怒られはしたけど、上司も色々気を回してくれてね。思ってた以上に早く片が付きそうだわ」 「そっか、良かった」 またこれから忙しくなるなーと香名は笑う。 そして店内を見回して言った。 「そーいえば今日は環慈君来てないの?」 「うん、明日は会う約束してるんだけど」 「そっかぁ…改めてお礼言いたかったんだけどなぁ」 「明日言っておくよ」 「ありがと。またみんなで遊びたいし、それもついでに伝えといて」 「分かった」 そろからしばらくとりとめのない話をして、彼女は帰っていった。 ついに明日は環慈に会える。 一体話とは何なのだろうか。

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