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第16話
しばらく触れるだけのキスを繰り返して、二人はようやく身体を離した。
夢見心地に視線を向けると、環慈がへへ…と照れたように笑った。
ついつい灯唯も口元が緩む。
ふと思った。
「香名さんに報告しなきゃな…」
「ハァ?」
溢れた台詞に環慈が眉を寄せる。
「こんな時にまで香名さんかよ」
唇を尖らせて嫉妬する姿が灯唯には可愛くて仕方ない。
しかし次の瞬間、
「報告ってどういうこと!?」
打って変わって慌てふためく環慈に、あぁ…と灯唯は頭を掻いた。
「いや、香名さん俺等のこと知ってるもん」
「そりゃ知ってるけど…いきなりカミングアウトかよ?」
「あー…知ってるってのは、俺がお前とのこと相談してて…」
「相談!?……お前凄いな…」
呆れたように言われ、つい苦笑が漏れる。
「なんか流れで。向こうもあの男と色々あったし、お互い相談し合ってて」
「でも最初抵抗なかったか?自分ホモじゃないのにーとか」
「そりゃあったよ。でも考えたって答えは同じだし。…それに香名さんが、環慈のことは特別なんだろうってアッサリ言ってくれちゃったから割り切れたっつうか…」
「…そっか」
そんなら報告しないわけにいかないなぁと笑った環慈を見て、胸にじんわり温かいものが広がる。
臆するどころかアッサリと灯唯に同意するその懐の深さが堪らなく愛しい。
しかし次の瞬間、間の抜けたことを言われて灯唯の身体からガクッと力が抜けた。
「でもさ、俺等の場合エッチする時の女役ってどっちになんの?」
「……はぁ?」
「俺はできればトモの上に乗りたいんだけど」
「お前なぁ……俺が上に決まってんだろ」
「何だそれ!」
この後小一時間程どっちが上か下かで討論し、結局その場の流れで交替しながらやろうということになった。
かなりくだらないがこの時は真剣だから仕方がない。
実際今から事に至るわけでもない。
それでも妥協案に期待と不安があるのか、環慈はベッドの上でゴロゴロのた打ち回っていた。
「んじゃ連絡するぞ」
「おーしろしろー」
適当な返事を受けて灯唯が電話をすることに。
しかしリダイヤルを押して応答を待つが、香名はなかなか電話に出ない。
また掛け直そうと発信を切ろうとした時、プツッ…と電話が繋がった。
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