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第2話
高校一年の春。ぼくはミハルに逢った。
よく、図書室でふらふらしていた彼に読みたい本を一緒に選んで読んであげていた。たいていは高校にはいったばかりのぼくには小難しい本ばかりで、読んでいるこっちの方が理解できていなかったけれど……
「イチカくんにはまだ早いかもね」
一緒に読んでいたのは高月先輩。いつも図書室で受験勉強をしている彼は、ミハルが傍でまったく勉強と関係ない本を読んでいても気にすることなくぼくに話の内容をきいて、素直に耳を傾けてくれていた。
ぼくと彼と高月先輩。三人で過ごす図書室のひとときがすきだった。けれど、一年生と三年生が交流できる時間はあまりにも短く、限られていた。
だからよけいに愛しく感じるのかもしれない。ふたりがいなくなってからも、彼らの仕草や、笑顔や、声のひとつひとつを、何度も脳裡で再生させては溜め息をついていた。
永遠にも似た時間がいつまでも穏やかに続けばいいと思ったこともあった。けれど、高月先輩のことを想うミハルはそのままじゃいけないんだよと淋しそうにぼくに別れを告げて、いなくなってしまった。
――それでも恋しいなら、卒業したら追いかけておいで。
二年という時間は短いものだと思ったけれど、高校三年間のうちの二年は長かった。十六歳になったばかりのぼくに、二年の隔たりはおおきかった。
とても意地悪な、さよならだった。
ぼくは、十八になった冬、彼の言葉に応えに、ここまで来たのだ。
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