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第15話 葛木くんの訪問
「きったねぇボロアパートだな。」
「…。」
僕は葛木くんの独り言に返す言葉もなかった。
彼はちゃぶ台の前に座り部屋を見渡す。
「あの…どうぞ。」
僕はお茶を出した。
そして彼の前の位置に座る。
しかし…口に合わなかったらしい。
「これ水道水でやってるだろ。」
「うん。」
水道水でお茶作ってるとかわかるんだ。
「はぁ、噂で何となく聞いてたが、酷い生活だな。」
あ、そんな噂なんてあったんだ。
「叔父に追い出されて、ボロアパートに住んでるって皆知ってる噂だ。桜井以外はな。」
僕の表情が読めたのか葛木くんが教えてくれた。
「あの…桜井くんは…。」
知ってるのかな?
「この間、あいつの取り巻きが教えてたが、逆に興味津々だったぞ。今日は家庭教師の日だから行けなくて地団駄踏んでやがった。お土産のフルーツは桜井からな。」
そういえば…葛木くんの足元まであったフルーツは誰が用意したんだ?と思ったけど桜井くんからだったんだ。
「四月一日からフルーツが好きだって聞いて大量に用意してな。持ってけとか押し付けやがった。」
不機嫌な葛木くんって初めてみるな…と思いつつ、僕は呑気にお茶を飲んでいた。
「生活かつかつなんだろ?」
何で知ってるんだろ…。
「お前が出てくる間に隣の厳ついのが言ってた。」
隣の厳つい…。
あかねさんかな?
「お前、ストーカーにも合ってるんだって?」
「え?」
ストーカー?
「休みの度にチャイムが鳴り止まないって厳ついのが言ってたぞ。」
あかねさんが厳つい人認定なんだ。
「うん、誰かわからなくて。ドアに近づいたらドアノブ回されるから怖くて近づけないんだ。」
「それ警察沙汰だろ。」
「うん、でも良いんだ。叔父さんの迷惑にはなりたくないし。」
そうあの人に迷惑をかけちゃいけない。
「そうか。」
そういうと葛木くんは黙った。
その日はチャイムが鳴らなかった。
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