21 / 36
第19話 聴取
桜井side
一方その頃、桜井は電話で四月一日から椿銀行の内部について教えてもらっていた。
『…ということらしい。』
「なるほど、随分やらかしてるな。」
どうやら椿の伯父・源次郎は着服のみならず、銀行で買った株を自分名義にして着服し、その株で儲けた金を申告せず、そのままポケットに入れていたそうだ。
それをまた洋に罪を擦り付けようとしているらしいが、前当主である洋の父が本人の好きなことをさせてやりたいという理由で洋に帝王学を学ばせてないため、洋は何も知らない。
それどころか洋は算数ですら苦手でいつも数学と物理は桜井、葛木、四月一日の3人で交替しながら教え、泣きながら課題を終わらせていた。
百合子夫人は養子である洋を引き取りたいと言っているが、源次郎が跡継ぎだと洋を離さないため、話が難航している。
「何かに利用するつもりなのはわかってるが…」
『まぁ、桑名の子どもは椿の子と発表するだろうが、界隈じゃ伯父の子どもってのは周知の事実だ。それ以外に何かあるのかはわからんが…』
と、四月一日が言葉を濁した。
「何だ?知ってそうだな。」
桜井は濁した瞬間を逃さなかった。
『実は椿銀行はかなり負債を抱えてる。それを椿に擦り付けたいんだろ?』
「はぁ…。アホか…。」
源次郎の計画では前当主の息子である洋が一人でやったことにし、全ての罪を擦り付け、全ての責任を押し付けようとしているのだろう。
そして、自分は逃亡。
「頭悪っ!」
『まぁあの人、昔から頭悪いから』
四月一日がため息をつきながらそうだと答える。
『先代が当主になる際に俺がなるって啖呵切ったものの、言われたノルマを達成できないどころか大赤字を出した。それなのに懲りずに俺がなるんだと騒いでたらしい、』
バカさは健在か
桜井はそう思うとため息をついた。
ともだちにシェアしよう!