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第23話 まどろみの中に

「こんなんで桜井くんの隣にいて良いのかな?」 僕はシャーペンを机に置いてボーッとしている。 今まで持っていたものは全てなくなった。 両親、家、なばかりだけど婚約者…今度は居場所までなくすのだろうか? 僕は漠然とそんな考えしか浮かばなかった。 「僕って何のために生まれてきたんだろ?」 伯父に邪険にされ、婚約者が知らぬ間に裏切り、伯母とは接触できず、どうしたら良いのだろうか? コンコン 「椿!」 ガチャ 桜井くんの声と同時にドアが開き、ドアの方に向く前に抱き締められる。 「ごめん、一人にして。」 「桜井くん…。」 桜井くんの温もりに安堵した僕の目には涙が浮かぶ。 彼は私服を来ているようで制服のカッターのような固さはない。 「はぁ椿だぁ。」 桜井くんは尻を撫でながらそう言った。 やっぱり桜井くんは桜井くんです。 「あ、あの…。」 「俺がいる。」 桜井くんの言葉に僕の動きは止まる。 「俺がちゃんとお前のそばにいる。」 その言葉に僕は涙が止まらなくなった。 泣き出すと尻を撫でるのを止め、背中をとんとんしてくれる。 僕は段々深い闇に誘われる。 コンコン 何かがノックされる音がした。 「ぐっすりだな。」 葛木くんの声だ。 「あぁ。」 「それにしても解決は?」 「もう少しだ。椿をやはり探し始めた。」 「思ったより早かったな。」 桜井くんと葛木くんのやりとりに僕は何を話しているのかわからない。 僕は起きようと動くと桜井くんが背中をトントンと優しくあやすように叩いてくれる。 「起きなくて良いよ、今はお休み。」 桜井くんの優しい声に僕は深い闇に落ちる。

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