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第25話 お兄ちゃん
「豊はよく寝るな。」
ドアの方から呆れたため息と共にそんな言葉が聞こえた。
その方向を見ると桜井くんを大人にしたような男性が腕を組んでいた。
「おはよう、ちゃんと寝れたかい?」
そう言いながら近づいてきて僕の目の前で屈んだ。
温かい笑みに僕は涙を堪えながら「はい」と答えた。
「ふふっ大丈夫だよ。豊からは話を聞いてる。生活については葛木君からね。」
そういうと頭を撫でてくれた。
「豊もこの件でかなりヤキモキしてね。イライラしてたんだ。」
僕の知らない桜井くんだ。
いつもはひょーひょーとしてて僕の尻を撫でて満足できないとトイレに連れ込んでズボンの中に手を突っ込んでくる桜井くんしか僕は知らない。
「そっか、豊は君にぞっこんなんだね!」
「へ?」
どうやら声に出ていたようでお兄さんはにこにこしてたけど僕の頭を撫でながら何か後ろに黒いものが見える気がする…。
「さぁ、朝御飯だ。豊を起こそう。」
「はい…。」
何か嫌な予感。
お兄さんは立ち上がるとその腕を大きく振りかぶり…。
殴られる!
僕は反射的に体を丸くし、腕で頭を守り目を閉じたがその衝撃はマットレスから伝わるだけで直接僕には来なかった。
「痛ってぇ!」
桜井くんの悲鳴が聞こえる。
「何だよ!」
「豊くん、ちょっとお兄ちゃんとお話ししようか?」
お兄さんが桜井くんの腕を引っ張って部屋を出ていってしまった。
僕はどうしたら良いですか?
「こんこ~ん♪」
その後に別の男性が入ってきた。
「ぐっもーにん!」
フワフワした男の人だ。
僕は急いでベットの上に正座した。
「おはようございます。」
僕は挨拶をすると満足そうに笑みを浮かべる。
「ゆーくんと違って純粋で可愛い感じの子だね」
僕はその言葉にどう反応して良いのかわからず、首をかしげた。
「それよりご飯にしよ~!挨拶はその後にしよ~!うんうん、僕って天才~♪でもその格好でご飯はダメだね☆」
僕はそう言われ、自分の服装を見るとパンツを履いてなくてブカブカのTシャツを着ている。
何より首回りが大きく胸が見えそうだ。
「あっ!」
「ふふっ♪ゆきちゃんのお服になるけど着ましょうね~♪」
僕は恥ずかしさのあまり布団に潜った。
穴があったら入りたいってこういうことか…。
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