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25話
「落ち着いたか?」
「うん。ありがとう」
若干涙の跡があるが、敢えて触れない
それにしても、俺の周りのΩは既に番を見つけたらしい
そのせいもあってか、Ωが番を見つける確率が至極低いと言うのはデマの様に感じる
「取り敢えず今日は部屋で休め。明日から相手してやるから」
「うん、ありがとう」
目を腫らしながら笑顔で言うヒノは見てて痛々しい
書斎室のドアが閉まるのを確認して、小さく溜息を吐いた
「Ωって大変だな・・・。報われるとは限らない恋を一生懸命に思い続けて」
「そうですね。一度運命の番を認識してしまえば、只管相手を想うしか無いのですから・・・」
お前もか・・・
「ルイスは、その相手とはどうなんだよ」
一瞬頭にハテナを浮かべ、意味が分かったのかハッとした
「い、いえ!その・・・、番の相手は身分が違い過ぎて・・・」
身分?
て事は、貴族以上って事か
「ふーん。しかし、王家の専属騎士やってるんだ。結構身分としては高い位置を確立してるんじゃねえの?」
「こんな立場、意味なんてありません」
「そうか」
よく分からん
「良いんですゆっくりで。ゆっくり俺の事を見てくれるようになるまで、俺はいくらでも待つ覚悟がありますから」
そう言いながら微笑む笑顔は穏やか過ぎて、見てて凄く悲しくなった
「もし、その相手が見てくれなかったら?」
ルイスが唾を飲む音が聞こえた
「その時は・・・。その時は、潔く諦めます」
健気だと俺は思った
どうかルイスの番相手が気付いてくれるようにと、心中で密かに祈った
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