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第2話
そんな同じ1日を繰り返していたある日、珍しく朝からバイトだった涼は2時頃には職場を出た。このまま家に帰っても良いが暇で用事もなく夕方には帰ってくる家族より早く家に居てもな…どうせ会話もないし互いに気まずいし…せめて誰か2人帰るまでは、とバイトと家の通り道にある、知っているが利用した事の無い広めの公園を見て回ることにした。
まだ日の高い昼間だが平日なので子供の姿もなく遠目に散歩やランニングをする人がちらほらと見える程度。周りの目も気にならず気温も丁度よく過ごしやすかった。
広場にある自動販売機でお茶を買い、のんびりと歩いたり時々あるベンチに座りスマホを弄ったり。風に揺れる木の葉を眺めてボーっとしている
「ふわぁ…今日はめちゃくちゃ忙しかったし疲れたな…。母さんと梗が帰ったら俺もすぐに帰って、風呂入って寝よう…」
心地好い風に吹かれウトウトしていたのだろう。ハッと目が覚め顔を上げると日も傾き始め、頬を撫でる風が冷たく感じ始めた。そろそろ家族も帰っているだろう…俺も帰ろうと立ち上がったその時
肩からふわりと何かが落ちた。
そういえば風は冷たいのに何故か寒いとは感じなかったな。
振り返り今まで自分が座っていたベンチを見ると見覚えのない黒のコート。これが肩に掛かっていたので寒くなかったのか。しかし何故コートが俺の肩に…と考えていると視線を感じた。
少し先にある木影のベンチに1人の男が座り、こちらを見つめている。
ここは近所だが知り合いでもなければ見たことも無い、こんな時間に公園にいるなんてと思ったが自分も周りからそう見えているだろうと呆れ、もしかしたらこれを掛けてくれたのは彼なのではとコートを手に取り歩き出す。
彼の視線はずっと涼を追いかけている。
目が隠れるか隠れないか程度の前髪、少し長めの黒髪。白い肌、涼より少し年上の若い男性だ。
当初から少し微笑みながらこちらを見ていた彼は涼が自分の前に来ると話しかけてきた
「ふふ、…こんなところでうたた寝しては風邪を引いてしまうよ。声を掛けたけど起きなくてね。それを掛けておいたんだ、寒くなかったかい?」
やはり彼がコートをかけてくれたようだ。
「あ、はい、ありがとうございます…すみません、恥ずかしいところをお見せしました」
優しく暖かい視線と口調に少し恥ずかしくなりコートを手渡しつつそう答えた。
「気にしなくていい、こんな気持ちいい日に眠たくなってしまう気持ちは俺にも分かるからね」
そう答えた彼は立ち上がると受け取ったコートを羽織った。
「あの、何かお礼をしたいんですが…、俺にコートを貸したせいで貴方の方が寒いですよね、さっき手が当たった時に冷たかったし何か温かい飲み物でも」
「大丈夫、元々冷え性でね。着込んでいて暑いくらいだったから丁度良かったんだよ。君が風邪を引かなくて良かった」
確かによく見てみると彼は厚着をしている。
Gパンに長袖のシャツ、その上にパーカーを着ているだけの俺とは違い、彼は黒のスラックスに薄手のジャケット、首元には黒い襟が見えるので中にタートルネックの様な物を着ているのかもしれない。
涼の視線に気付いたのかコートの前を開き、
ほら、だから本当に気にしないでくれと
困った様に言う彼の言葉に甘えることにした。
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