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到着〜若草学園へ降り立つ〜

    新しい生活の場となる若草学園へと到着した俺達は、校門の前で新入生歓迎の札を掲げている引率の先生に声を掛けられる。 「おはようございます!  新入生のみなさんは玄関口の前に設置されたクラス分け表を確認してからそれぞれのクラスへ向かってください。  一年生のクラスは一階にありますので迷うことはないと思います。  各クラスの担任の指示に従ってホームルームに入り詳しい説明や入学式の事前指導を受けるようにお願いします!」    と説明を受けたので玄関口前に有るという掲示板へと向かった。  桜が満開で花びらが舞い散る中で、俺は見覚えのある後姿を見つけた。  あの外はね気味の赤みがかった茶髪頭に、一房だけひょっこりと生えた触角のようなくせっ毛。  とてつもなく嫌な予感が襲い、俺は掲示板前へと向かう歩みを止める。  突然、立ち止まった俺を見た龍之介が、声を掛けてきた。      「翼っ! いきなり立ち止まったりしてどうしたんだっ!? はやくクラス分け表、見に行こうぜっ!」  そう言いながら龍之介が背後にまわり、俺の背中をグイグイと押す。  それを見ていた真澄は、不機嫌な表情で、龍之介が俺の背中を押してるのを見て無言の圧力(プレッシャー)をかけてきた。  (翼君、自分の足で歩け。龍之介君にべたべたするな)  と目が言っているような気がした。 俺がべたべたしているんではないのだが、ヤツにはそんなことは、どうだっていいに違いない。  仕方がないから俺はゆっくりと牛歩戦術で、速度を下げてじりじりと歩くことにした。  そんなことを俺がやっているうちに、見覚えのある後ろ頭のその生徒は、クラス分け表を見終わったのか、玄関口へと向かい中へと入って行き姿が見えなくなった。  俺はホッとして胸を撫で下ろした。  知り合いのいない場所で、悠々自適に過ごすという俺のささやかな望みに影を落とすその存在が、気のせいであると俺は自分に言い聞かせて、クラス分け表が貼り出されている、掲示板の前に立った。    一年生のクラス数は、A~Gまでの7クラスか……  俺は自分の名前が書かれている組をざっと見て探す。  Aクラスに俺の名前は書かれていない。  さらにB~Fまでを見ていくが、自分の名前は見当たらなかった。  残りは、Gクラスになるが、俺はGクラスになるのか。   最後に残ったクラスの名簿を見ていくと、見覚えのある名前が……  牛山 礼二  ……小さい頃に離れ離れになった兄貴と同じフルネームだ。  しかし、まさか……な……  牛山という苗字も礼二と言う名前もよくある名前で同姓同名のヤツがいたとしても何もおかしいことはない。  それに、兄貴は俺よりか二つ年上だったのだから同級生なわけがないのだ。        そんなことを考えながら名簿を見ていくと、さらにまた見知った名前を見つけた。  小林 龍之介  天上院 真澄  ……よりによって同じクラスかよ。  俺は龍之介と真澄の名前が、同じクラス表に記載されてるのを見つけてしまいさらに ブルーな気分に落ち込んだ。  俺はただ普通に平穏無事に学園生活を満喫したいだけなのに……  コイツらと同じクラスになるなど、ささやかな俺のその希望は既に打ち砕かれたも同然だ!  俺は、愕然とした表情で固まって、思考を停止していた。  この先に待つのは絶望しかないのだろうか?       そんな俺の内情を知ってか知らずか、龍之介が嬉しそうに拳を振り上げてはしゃいでいた。 「やりっ! 翼と同じクラスじゃん!」  俺とクラスメイトになった事を手放しで喜んでくれるのは、悪い気はしないのだが、真澄も同クラスとなると気が滅いる。 「龍之介君。翼君と同じクラスなのを喜ぶ前にこの僕と同じクラスになれたことを喜びたまえ」 「なにいってんだ。真澄と同じクラスだなんてのは俺にとっちゃ最悪な結果だ!」 「君は相変わらず、ぶっちゃけて言うのが当たり前なのか? いつもそれで痛い目見てるのに学習能力はないのか?!」 「うるせー! しねばいいのに!」  しかし、龍之介のヤツ怖い物知らずだな……  真澄相手にずけずけとあの暴言っぷりだ。  コイツは将来大物になるに違いないと、今日二回目だがまた思った。  クラス分け表の各新入生の名前の前にある番号を確認して、俺達は玄関口へと向かい、それぞれの番号と記名されたプレートが貼り付けられた靴箱の中へと脱いだ靴をしまい、鞄から上履きを取り出して履き替えた。  玄関を上がってすぐの廊下に親切に、「新入生の教室、A~G組まで順にこちら!」と言う文章と、でかでかと紅い矢印が描かれた紙が貼り付けてあり、俺達はその紙に書かれた通りの方向へと廊下をまっすぐに突き進み、一番最奥にあるG組へとたどり着いた。  ――1年G組  俺は自分がこれから在籍するクラスの札を見上げながら、軽く深呼吸をした。  一体どういうやつらがいるクラスなのか、俺はこのクラスでうまくやっていけるのだろうか? そんなことを考えて、余韻に浸ってからゆっくりと引き戸に手をかけようとした。      が、俺よりも前に龍之介が引き戸に手をかけて思いっきりズバァァンッ! と派手な音をたててスライドさせて開き、教室内へ飛び込むと、いきなり声を張り上げて自己紹介をした。 「G組のクラスのみんなー! おはよおぉうっ! 俺は小林龍之介だあぁぁっ! 皆今日からよろしくなっ!!!」  敬礼するときのようなポーズをビシッと決めて教壇の前に立った龍之介へと既に入室していた生徒達の視線が集まった。  皆の視線が集中してる今、俺と真澄は非常に、教室に入りずらい雰囲気だ。  だが真澄は気にするでもなく開け放たれたままの入り口から、教室に入ると、龍之介の腕を引いて、彼を自分の席に座らせてから、自分の番号の席へと着席した。  真澄のヤツ、さすがに龍之介の扱いになれてやがるな。  クラスに絶対一人くらいは龍之介のような熱血お調子者のようなキャラの生徒はいるもので、クラスの皆も大して気にした風はなく、それぞれの連れと雑談へと戻っていった。

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