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近くて遠い【1】

 ともあれ、酷く腫れてしまった痛々しい、秘所をそのままにしておいては、後で兄が辛い思いをするだろうと、開いた足から手をどけて、ベット脇のサイドボードに置いた兄の鞄から、保健医に渡された薬袋を取り出して中身をあさる。  確か、軟膏とかあったはずだ。  数種類の軟膏を取り出して、中に一緒に入っていた説明書を見て確認してから、粘膜や炎症なんかにも塗布できる軟膏を選んで手に取った。  その軟膏の蓋を回して開けると適量を指先につけて、双丘の奥にある蕾へと塗りこめていく。  指を二本、差し入れてぐるりと回すように全体に塗りひろげて抜き差しした。  ある程度、軟膏を塗りこめて、指を引き抜こうとしたら、内部の粘膜にぎゅっときつく締め付けられた。 「ふあぁっ!」  兄の口から鼻にかかった悩ましげな声が漏れて、翼はハッとして慌てて、兄の顔をみやる。  兄は、眠りから覚めてはおらず、無意識のうちに感じて漏れた声だったようだ。  普段の兄の低い声からは想像が出来ない、高音で濡れた声にドキリとした。  内部に挿し入れたままの指を動かすとさらに高い声が兄の口から漏れる。 「あ、んんっ」  ……ってなにやってるんだ俺は!  翼はそう思って我に返り、慌てて指を引き抜いた。 「ん……あ」  指を引き抜く瞬間に内部がまたきゅっと締まり、兄の口から、名残惜しげな、残念がるような悩ましげな声が零れた。  内壁を指で中途半端に刺激されて、礼二が内股をもじもじとさせて、形を変えだした中心から蜜を溢れさせていた。  そそり立つ陰茎の先端の割れ目から、先走りの液が漏れて伝い、よく見なければ生えていることすらわからないくらいに淡い茂みや腹部を汚していた。  翼は勃起した兄の陰茎を見て慌てふためいた。 「うわぁ! 兄貴のちんこがーーっ!」  自分が指を入れて後ろを刺激したせいでそうなってしまったのはわかるがどうすればいいのか軽くパニクった挙げ句、翼はその兄の勃起してしまった陰茎をきゅっと手の平で握り込んだ。 「うんっ……」  翼の手の平に陰茎を握り込まれた礼二は相変わらず眠り込んだままだが感じたのか、甘い声を上げる。  兄の陰茎を勃起させたままでいさせるのはかわいそうに思った翼は彼のその部分を緩く扱きはじめる。 「んんっ…」  次から次へと溢れてくる先走りに助けられて、ぬるぬると滑りやすくなりだんだんと扱きやすくなってきた。    ぐちゅぐちゅといやらしい水音がやけに部屋中に響いているように感じて、兄のものを扱いているだけなのに、翼はだんだんと気恥ずかしくなりいたたまれない気持ちになってくる。 「とりあえずこうやって扱いてやってれば、元に戻るだろ……」  さっさと終わらせてしまおうと、兄の陰茎を扱く手の平の動きをはやめて射精を促すがなかなかその気配を見せない。  何か決定的な刺激が不足しているのか、先走りの蜜は大量に零すのになかなか射精しない兄に、焦りを覚えはじめる。  ふと、兄の上半身を見遣ると、唐突に自分で自分の乳首を指先に摘んでぐりぐりと弄り始めた。 「なっ……!」  翼はそれを見て、耳まで赤くなった。  礼二は眠り込んだままで無意識に物足りない刺激を補おうと指先でくりくりと乳首を転がして自慰をし始めたのだ。 「あっ! ああん、あふ……ぅ」  緩く開いた口端から唾液が一筋こぼれて顎を伝い、伏せられたままの瞼の淵から涙が滲んで、形のよい細い眉は悩ましげに八の字描くように潜められ、頬が紅潮していた。  兄がそんな表情をする所を、見た事がなかった翼はそれを見て不覚にも、自身も興奮してしまったのを感じた。  慌てて、首を左右に振りたくって邪念をどうにかしようとしたがどうにもならず、自分のズボンの前が窮屈になっていくのを止められなかった。  男相手にしかも実の血が繋がった兄のアへ顔見て勃起するなんて、俺の性嗜好は普通じゃなかったのか!  いやいや、その場の雰囲気や勢いに当てられてちんこが勃つくらい普通のはずだ!  きっと、若いせいだ!  若いから仕方ないんだ!  ということで、俺はいたってノーマルであると主張する!  兄貴にキスされたときも反応が遅れただけで受け入れたとかそういうのでは断じてない  ……と言い切れないのが不安要素ではあるが。  嫌じゃなかった時点でどうかと思うけど、反応が遅れたせいで多分、思考が追い付かなかったんじゃないかと思う。  翼のそんな葛藤を知ってか知らずか、礼二が乳首を弄る指先の動きは、中指と親指で摘み上げて、人差し指の爪先でカリカリと、先端を擦るような形に変化していた。 「ふぁ……はぁ、あああん」  眉根を寄せて頬を真っ赤に染めて、唾液が伝う口端は快楽に緩み、弧を描き、笑みが浮かんでいるように見える。 「うっ!」  その蕩けきった兄のいやらしい表情を見て翼は前かがみになって自らの股間を押さえてうずくまった。  兄の陰茎を扱いていた手の動きを止めて、こらえ性のない自らの分身を慌てて、両手で押さえつける。  だめだ、今ので完全にフルおっきしちまったああぁぁっ!  翼のそんな叫びも空しく、礼二はいきなり、止まってしまった手淫に不満げな声を漏らす。 「んうっ……」  途中でやめられたら辛いのは解る。  けど、俺も辛いんだよ!  完全に臨戦態勢に入ってしまった自分の息子をどうにかしないと、正直、爆発しそうだ……。 「あっ、やめひゃらめぇ! もっとぉ……!」  兄が鼻にかかった甘えるような声で、舌ったらずにおねだりするのを聞いて翼は思わず鼻筋をつまんで、鼻血がでそうになるのを堪えた。  興奮しすぎて、呼吸さえままならなくなってきた。  軽くパニックを起こしかけた、思考回路をフル稼働させて、自分の分身と兄を同時にどうにかする方法を考える。 「もっと、ぐちゅぐちゅして……!」  うわああぁぁっああぁあっ!!!  なんてこというんだああぁっ!!!  今の台詞で、昇天しかけた、もう、俺はだめだ……!  危うく、その台詞で射精しかけた自分に絶望したっ!     このまま、こうしていても兄も自分も辛いままで何も解決しないと湯だった頭でそう考えた翼は、兄の両足の膝裏を掴んで、赤ん坊のおしめを変えさせるときのような体勢にして、抱え上げてから、足を閉じさせる。  そうやって出来た逆三角のスキマに、翼はズボンをせわしなく下ろして、取り出した自身の肉茎を差し込んだ。  礼二の閉じられた内股に挟み込んだ、肉棒を抜き差しして、動かして擬似的に挿入しているような状態にして自分をどうにかしようとした。  俗に言うスマタというプレイの一つだが、男同士でする場合は互いの性器が擦れ合う形になる。  翼のものに押し上げられるような形で礼二の二つの袋と肉茎が擦られて、嬉しそうに先走りの愛液をぴゅくりと吐き出した。 「はひゃあぁっ!あああんっ!」  乳首を弄りながら涙を零して、悦びの声を上げる礼二の喘ぎ声を聞いて、もっと満足させてやろうと、翼もだんだんと動きを早めていった。  しかし翼は、顔が熱くてドキドキしてなにがなんだかわからなくなって混乱していた。  自分がいま何をやってるかすら、解らないくらいに……。 「あ、ああんっ! ひもちぃっ! もっとぉ……!」  兄貴がもっとって言ってる……もっと足を閉じさせて、擦れるようにしてやればいいのか?

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