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それぞれの過去〜馨&和成編〜【1】

□ ――昨夜、20時頃。 ―42号室―  馨が自室の居間で机に置いたノートパソコンで毎日の日課でもあるネットサーフィンをしていた。  和成は馨の向かい側の席に座り、なんの気なしに頬杖を付きながら、気怠げにファッション雑誌を読んでいた。  そんな中で”それ”はこちら側が驚いて思わず飛び上がりそうになるくらいに大音量で聞こえてきた。  隣りの部屋から耳を劈(つんざ)くような龍之介の物凄い悲鳴が。 『ぐぎゃああ゛ああああぁっ!  じぬうぅぅぅーーーーっ!』  その悲鳴が聞こえた後、急に、怖いくらいに静かになった。  馨と和成はなにがあったか気になりつつも、真澄と龍之介がまた喧嘩でもしているのだろうと思いそれぞれがしていた事にまた集中しだした。 『痛い、痛い、痛い!  ぐぎひいいぃぃーーっ!!!』  そしてしばらくしてまた聞こえてきた悲鳴が切羽詰まったもので、心配でいても立っても、いられなくなった和成が、隣りの43号室へと向かおうと席を立った。 「かっ、和成君! ダメだって!」  それを見て馨は慌てて和成の腕を取り、引き止める。 「さすがにあんな切羽詰まった叫び声を聞かされたらほっては置けないだろうが……」  和成がそう言うが馨は断固として彼を隣りの魔物が住む場所へとむざむざと逝かせる気はなかった。 「ダメダメダメだって!  和成君まで殺られちゃうから!」  馨は和成を背後から抱きしめて、隣りの部屋に行かせまいと必死になりつつ、和成の着ている私服の黒シャツを捲り上げて剥き出しにした、彼のうっすら均等良く筋肉の付いた両胸を、手の平で覆い、形を確かめるようにして触った。 「どさくさ紛れに何やってる……」 「えーー、だって今日、僕達、初夜だよ!」 「俺はそういう気はないと言っただろう」  和成は自身の胸板の上をいやらしい手つきでごそごそと這い纏わる馨の手を掴んで止めさせようとした。     胸の上を這い回る手の平に愛撫されて、徐々に固さを持って自己を主張してくる桜色の突起を、人差し指と中指で挟み込んで転がされ、弄られて、感じてしまい、和成の手から抵抗する力が緩み、結局は馨の悪戯な手の動きのなすがままになってしまう。 「あはは、そういう気が無いとか言って、乳首がビンビンに固くなってるじゃない」  すっかり固く勃起しきった、和成の乳首を人差し指と中指できつく挟んで、引っ張りながら言う馨に、和成の顔が羞恥で真っ赤に染まり耳まで赤くなった。 「や……んん、馨、やだ、やだ」  半泣き状態で首を左右に振りたくって、恥らう和成を見て、あまりの可愛さに馨のジーンズの前がだんだんと窮屈になっていく。  和成の下半身も見やれば、前が突っ張っているのがわかる。 「うあ、なんか、尻に当たってる……」  馨の張りつめた性器が、和成の尻の狭間を押し上げるように当たって自己を主張しているのを感じ、和成が尻を浮かせてそれから離れようと、逃げ腰になる。 「あーーもうっ! 和成きゅんが、あんまり可愛すぎるから、我慢できなくなっちゃいましたよ、ぼかぁ」 「うわああ! やめろ馬鹿ぁ!」  逃げ腰になった和成の腰に、完全に固く張り詰めた陰茎をジーンズの前を開けて、取り出してからぐりぐりと押し付ける。  馨はそのまま彼の性器を押し上げるようにして、股の間に自身の陰茎を差し込み、腰を動かし始めた。  着衣をしたままだが、所謂、立ちバックでスマタ状態になる。 「うあ! ちょ、待て、服が汚れる……!」 「そんなの後で、洗濯すればいいって。  あーーきもちーー」 「や、んんっ、ば、か、勝手な、こと、ばかり言って……あ、あ、あ!」 「またまたぁ、そんなこと言ってーー! 和成君だって随分と気持ちよさそうじゃないのさーー」  馨の固く育った肉棒に押し上げられて、擦り上げられる和成の陰茎も固く育ち、先端から大量の蜜を噴き出して下着の中がビショビショに湿って不快感を覚える。 「んん、かおるぅ、あ、ダメ、ズボン、穿いたままだと、気持ち悪い……」 「それじゃ、やっぱり服脱ごうか?」 「い、やだ、恥ずかしい、から……!」  ぼろぼろと涙を零して羞恥に真っ赤に染まった顔を左右に振りたくる和成を、馨は宥める様に抱きしめて、彼の耳元で囁いた。 「それじゃ、僕が先に服、全部脱ぐから、それなら少しは恥ずかしくないっしょ?」  そう言って馨は和成の左胸に手を宛てたまま、自分の衣服を器用に片手で脱いでいき全裸になった。 「ほら、今度は和成君の番だよ? 着たままだと湿って気持ち悪いんでしょ?」 「うぅ……やっぱりやだ」  この期に及んで服を脱ぐのを恥ずかしがる和成を見て苦笑した馨は、慣れた手つきで、彼のズボンのボタンを外し、チャックを下ろすと、下着ごと一気に引き摺り下ろして脱がせてやった。 「わ、やだ、見るな、馬鹿ぁ!」  滴る程に溢れた先走りの液に濡れた下半身を露にされた和成が、顔をさらに真っ赤にして、馨を非難するような声を上げる。  黒シャツ一枚きりを着衣した和成の裸体に思わず生唾を飲んだ。  白くて染み一つ無い肌理の細かい肌が外気に曝されて粟立つ。 「あはは、黒シャツ一枚だけ着衣してるってのがまた余計にエロいなぁ」 「どうしようもない変態だなお前は……」  変態だのなんだの言われるのに慣れて、今では半ば開き直っている馨にとっては今更、言われてもどうと言うことは無い。 「うひひ、そこは、それ、変態と言う名の紳士と言って欲しいなぁ」 「なんだそりゃ……や、馬鹿、胸ばかり、」  馨は和成の胸を執拗に撫で回す両手の動きを再開させると、剥き出しになった和成の太股の間に、自身の陰茎をまた差し込んだ。 「ひゃ、んんっ! 」  馨の陰茎に自身を押し上げられて、和成が艶を帯びた声をあげる。  馨は自身の陰茎を和成の太股に挟み込んだまま、腰の動きを再開した。 「あーー、和成君の生足ちょー気持ちいいんですけどっ!」  すべすべとしたきめ細かい素肌に直接、擦りつけると衣服ごしよりも、さらに快感が得られ、自然と腰の動きが速まってくる。  自身の先走りと和成がしとどに溢れさせた先走りとか混ざり合い泡立って滑りがよくなるにつれて快感もだんだんと強まってくる。  ぐちゅぐちゅと馨の肉棒が自分の股下を擦りながら行き来するたびに、淫猥な水音が響いて、和成の羞恥を煽り続ける。 「い、やだ、やだぁ、ひゃはぁ、あ、んんっ!」 「あはは、和成君、すっごい、おもらししたみたいに、ぐっしょり濡れてるよ」 「ああん、馬鹿、そ、なこと、言う、なぁ……!」 「僕は嬉しいんだけどなぁ。和成君、感度良くて反応良いし、可愛いし」 「く、は、ん、ん! か、わいく、なんて、んはぁ、なぃ……!」  自分が他人から見てどう見えているのか、自覚がない和成は、可愛いと言われた言葉を否定する。     だいたいからして男が可愛いと言われるのは必ずしも褒め言葉ではない。 「アアン、もう和成きゅんたら可愛すぎるっ!」  感極まった馨に腰の動きを早められて、和成の袋と茎が馨の肉棒に押し潰されるように擦られて、堪えきれない喘ぎが、半開きの口から漏れて、一筋の唾液がこぼれ落ちる。 「んはぁ……ああん、かおるぅ!」 「はあ、はあ、和成きゅん!」 「いや、はぁ……あ、んんっ、ダメぇ!」 「大丈夫、大丈夫、最後まで、無理強いしたり、しないから、ねっ!」 「あ、あ、あ、そういう、問題じゃ、なぃっ……馬鹿、あっ!」 「最後まで、ヤらせてくれるなら、それに、越したこと、ないんですけどねっ!」  馨は足の間に突き入れていた、自身の陰茎をいったん引き抜くと、和成の胸を弄っていた両手を滑り下ろして、引き締まった形のいいお尻を確かめるように、手の平で握り込んで、わしづかみにして割り開き、外気に曝された桜色の蕾へと、亀頭で蓋をするように押し付けて、入り口の感触を確かめるように擦り付けた。    「ひっ! い、やだ、ダメぇっ!」 「和成君、やっぱり僕の事嫌い?」 「はあ、はあ……う……嫌いじゃ、ない、けど、まだ、心の準備とかいろいろ出来てない……」  まだ馨を受け入れられる程、和成の気持ちはハッキリとはしていない。  若草学園へ入学する前に通っていた共学の中学で、二年の時、冬に馨と付き合い始めた。  それから、馨と和成は何回かデートして、遊園地のお化け屋敷の暗がりで、周囲にばれないように、初めて手を繋いで、学校では昼休みには一緒に弁当を食べ、放課後の人気の無くなった、夕暮れになり、茜色に染まる学校の屋上で、初めてキスをして、それなりに順調に愛を育んできた。  だが、実は和成には馨と付き合う以前に気になる相手がいた。  その相手は女の子で月城雪華(ツキシロ セツカ)と言い、神秘的な腰よりも長い白髪に紫の瞳をした可愛らしい少女だった。  彼女はしばらく見ないと思ったら、どこかの学校へといつの間にか、転校してしまっていて、和成は彼女に想いを伝える事なく、失恋してしまったのだ。  それで、気落ちして、無気力になっていた時期に、屋上に呼び出されて馨に告白された。 『和成君。僕はどうやら君に一目惚れしてしまったようだ。という訳で付き合って下さい!』  と物凄い勢いでまくし立てられて、うっかり頷いてしまった。 『えっ! マジで、付き合ってくれるの?! まさかオッケー貰えるとは思ってもみなかったよ!』  念願叶って有頂天になる馨を見てから和成はしまったと思ったが時、既に遅く、流されるまま付き合う事になった。      映画を見に行ったり、遊園地に行って観覧車でキスしたり等、一般的な恋人達がするような、デートをして(男同士だが)積極的で豆な性格の馨にあちこち引っ張り回され、連れ回されて、付き合っていくうちに和成もいつしか、失恋の痛みから立ち直る事が出来た。  一見、クールな一匹狼に見えるが、根は繊細で落ち込みやすく、寂しがりな和成は、馨の明るさや、強引さ、お節介焼きなところに救われた部分もある。 『馨はなんで俺を好きになったんだ? 男なのに』  と和成が馨に聞いた事がある。  それに返ってきた返答は予想外だった。  和成は性別なんか関係なく君が好きだとかそういう台詞を期待していたのだ。 『や、男だから好きになったんだってば! 僕、女の子に全く興味がないからね!』  和成はこの台詞を聞いて唖然として固まった。  そう、馨は所謂、同性愛嗜好の人だったのだ。 『男が好きですけど、何か問題でも?』 『いや、そういう奴に始めてあったから、どういった反応をしたらいいかわからないんだ』 『和成君はなんで僕と付き合う気になったの? 和成君は男しか好きになれないって訳じゃなさそうだし』 『いや、勢いに押されて……』  そう正直に答えてしまい馨をがっかりさせた訳だが、そんな事くらいでは全然めげたりしない彼は、それならそれで、自分に惚れさせてみせるとばかりに、和成をあちらこちらに引きずり回し、連れ回して付き合いを続け、今、現在に至る。  明るくて、気さくで、世話好きで、人懐っこく、誰とでもすぐに打ち解けられる馨の周りには男女関係無く人の輪が出来て彼はいつもその中心にいた。  そんな彼を端から見ていて、羨ましいと感じた事はある。  馨と付き合う以前の和成は自分から積極的に人と関わろうとはしない消極的な性格で、困っている人を見ても、なんとかしてやりたいと心の中では思っても、自分では力不足で無理だとあれこれ理由を付けて、結局はそれを行動に移す事が出来ず、直接手を差し延べられずにいた。  馨の世話焼きな性格が移ったのだろうか?けれど、そんな自分も悪くないと思う。  悲しい事や苦しい事を忘れられずに深く落ち込みやすく、いつまでも引きずるタイプの和成は、馨がいなければ、失恋の痛みから立ち直るまでにまだ大分時間が掛かったに違いない。  馨のお陰で早く立ち直る事が出来て、有意義な時を過ごす事ができて良い意味で自分は変わる事が出来た。  付き合っていくに連れて、だんだんと馨の人柄に惹かれていったのだろう。  馨のお陰で今の自分があるのだと、感謝している。  その気持ちを言葉にして馨に言うのはまだ照れ臭くて無理だけど、いつか伝える事が出来たらと和成は思っていた。

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